最終年度(平成25年度)に実施した研究は,非負のフーリエ係数を持つ関数に関するものである.古典的フーリエ級数においては,そのような関数では原点における局所有界性が大域的有界性を導く.この興味深い性質を,2つの直交関数系において考察し成果を得た.1つは,基本区間が半直線(非コンパクト)であるラゲールの多項式からなる直交関数系でもう一つは,2変数の直交多項式である円盤多項式からなる直交関数系である.これらの関数系においても,古典的な場合と同様に,局所有界性が大域的有界性を導くことを示した.この研究の意義は,非コンパクトな基本区間を持つ直交関数系と2変数の直交多項式を扱ったことにある. 研究期間全体(平成24年度,25年度)における研究成果は,古典的フーリエ級数やフーリエ変換におけるいくつかの興味深い性質を,他の積分変換や直交多項式展開について考察し具体的結果を得たことである.平成25年度については上述の通りであり,平成24年度については,つぎの通りである.一般メーラー変換に対するハーディの不等式を得ることを目的とし,実際それを示した.一般メーラー変換はヤコビ変換の特別な場合の変換であるが,有限中心の半単純非コンパクトリー群上の解析と関連して興味ある変換である.フーリエ変換の場合には,その変換と逆変換は本質的に同じものであるが,メーラー変換に対しては,変換とその逆変換は相当に違った形をしている.我々は,その変換と逆変換の両方に関してハーディの不等式を考察し,それらを得ることに成功した.その結果は,興味深いもので,正変換の方はフーリエ変換に類似であり,逆変化の方はハンケル変換に類似なものであった.
|