2次元あるいは3次元空間にひろがる非圧縮粘性流体の中に剛体の障害物があるとする。障害物が運動する問題を考察し、その周りでの流れの構造から障害物の運動効果を取り出すことにより、物体の運動と流体の運動の関係を数学的に解明することが本研究の目的である。 最終年度には、2次元平面で障害物が回転する場合に、以下の重要な進展を得て、論文を公開した(arXiv:1503.02321v1)。Stokesの逆理が障害物の回転により解消される機構は既に当研究初年度(24年度)に明らかにされていたが、そのときの解の空間無限遠での漸近展開の証明は外力の台が有界でないと通用しなかった。本年度には基本解の構造をさらに詳細に調べることにより、妥当な速さで各点減衰する外力に対する漸近展開と解の評価を示し、非線型問題へ進む展望を得た。前年度に着手した時間依存流の大域的安定性について、擾乱のエネルギ一ノルムによる減衰率をほぼ最適なものに改良し、論文を公開した(arXiv:1412.0204v1)。時間依存流としては、3次元全空間での自己相似解や時間周期解を念頭においている。また、そこで用いたFourier分解法と本質的に同等なことをStokes半群だけで行う方法も見出し、外部問題で対応する結果も得た。3次元空間で self-propelled条件をみたす物体の運動と流体の運動の相互作用の問題に対して、物体の並進速度と回転速度を与えるときにそれを達成する境界値を求める制御問題を考察し、物理的に意味のある2通りの制御方法を見出した。また、self-propelled条件によって流れの減衰率が良くなる機構も解明した。2次元障害物が並進する問題の線型化方程式が生成するOseen半群の時間減衰評価の論文が掲載決定したが(J.Math.Soc.Japan)、Oseenレゾルベントの基本解の漸近挙動の解析が本質的であった。
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