研究課題/領域番号 |
24540171
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
貞末 岳 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (40324884)
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研究分担者 |
中井 英一 茨城大学, 理学部, 教授 (60259900)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マルティンゲール / 分数べき積分 / モリー空間 |
研究概要 |
近年、実解析学においては関数空間の理論が急速に進展している。そこで本研究ではこれらの理論をマルティンゲール空間へ拡張し、マルティンゲール理論の基礎を再構築することを目指している。この主題に沿ってこれまでに次のような結果を得ている。 1. マルティンゲール Morrey-Campanato 空間を正確に定式化し、それらの異なる指標間での包含関係などの基本性質を証明した。さらにこれらの空間で分数べき積分作用素をマルティンゲール変換として正確に定義し、それが有界となる指標を明らかにした。これらのことは、今まで 2 進マルティンゲールという特別な場合に、p 乗可積分空間や Hardy 空間のみで知られていたものを拡張・一般化したものになっている。 2.一般化マルティンゲール Morrey-Hardy、Campanato-Hardy 空間を正確に定義し、それらの間のマルティンゲール変換が有界となる条件を明らかにした。さらに一般化分数べき積分作用素をマルティンゲール変換として正確に定義し、マルティンゲール変換が有界となる条件を用いる形で有界性を調べた。これは今までのマルティンゲール変換の理論を異なる視点で見直して新しい結果を得たものとなっている。 3.一般化マルティンゲール Morrey-Hardy、Campanato-Hardy 空間と一般化マルティンゲール Morrey-Campanato 空間とは、指標 p が 1 より大きいならば同値となることを証明した。これは基本的なマルティンゲール不等式として有名な Burkholder の不等式を、一般化マルティンゲール Morrey-Campanato 空間へ拡張したものとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度研究計画のうち、「atomic なフィルトレーションをもつ場合のマルティンゲール Morrey-Campanato 空間において分数べき積分作用素が有界となる指標の決定」は完了し、Journal of Function Spaces and its Application 誌に論文発表した。また、「マルティンゲール Morrey-Hardy 空間の定式化とその基本性質の解明」、「マルティンゲール Morrey-Hardy 空間における一般化分数べき積分作用素の正確な定式化」は、当初の予定を超えて進展し、研究集会「実解析学シンポジウム 2012」と日本数学会実関数論分科会の2回に分けて発表した。 なお、この「当初の予定を超えた進展」とは、マルティンゲール Morrey-Hardy 空間の研究において、マルティンゲール Campanato-Hardy空間の定式化を見出し、しかもそれが平成25年度に予定していた「atomic なフィルトレーションをもたない場合」へ拡張できることが判明したことである。また、これも平成25年度に予定していた「マルティンゲール変換の一般論を分数べき積分作用素が取り扱える形で定式化しなおす」ことも一部可能であると判明し、平成25年度に予定した研究の一部を前倒しで行った。 ただ、この前倒しのため、平成24年度研究計画のうち「マルティンゲール Morrey 空間の双対空間・前双対空間の特徴づけ」と「マルティンゲール Orlicz-Morrey 空間」については予備的な計算を行ったのみで発表には至らず、平成25年度に先送りすることとした。 まとめると、平成24年度研究計画の大きな部分は達成され、さらに一部は計画を超えて進展した。ゆえに、一部は達成されていないものの、おおむね順調に進展したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
代表者の貞末は、引き続き分担者の中井の助力を得て研究を進める。そのため勤務先の大学を相互に訪問するなど連絡を緊密にする。 なお、平成24年度研究計画のうち、「マルティンゲール Morrey 空間の双対空間・前双対空間の特徴づけ」を平成25年度に行うこととする。また、平成25年度研究計画のうち atomic なフィルトレーションをもたない場合の具体例として挙げた「無限次元 dyadic マルティンゲール」に関する研究は、「平成24年度に行った atomic なフィルトレーションをもたない場合の研究を発展させる」という形に変更する。これら以外は平成25年度研究計画に挙げたものを行う予定である。 また、上に触れたマルティンゲール Morrey 空間の研究において、「双対空間の特徴づけ」の部分は予備的な計算を行った結果、やや困難と見込んでいる。このことの達成が難しいと判明した場合、別の有効な研究課題に取り組むこととする。具体的な候補としては、掛け算作用素のマルティンゲール Campanato 空間における有界性の研究や、確率空間とは限らないフィルター付き測度空間におけるマルティンゲール空間の定式化とその上の分数べき積分作用素の有界性の研究などを考えている。とくに分担者の中井は以前関数の Campanato 空間における掛け算作用素の有界性を研究しており、それのマルティンゲール Campanato 空間への拡張は有力な候補と考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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