研究課題/領域番号 |
24540171
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
貞末 岳 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (40324884)
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研究分担者 |
中井 英一 茨城大学, 理学部, 教授 (60259900)
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キーワード | マルティンゲール / カンパナート空間 / BMO 空間 / 一般化分数べき作用素 / 最大関数 |
研究概要 |
本研究は、実解析学において進展した関数空間の理論をマルティンゲール空間へ拡張し、マルティンゲール理論の再構築を目指している。この主題に沿って、平成25年度には次のような研究を行った。 1. 平成24年度から継続している研究を進展させ、atomic なフィルトレーションでない場合でも一般化マルティンゲール Campanato-Hardy 空間を定式化し、Burkholder 不等式や John-Nirenberg 型不等式を樹立した。これによりユークリッド空間で知られている一般化分数べき作用素の理論をマルティンゲール空間へ拡張できたことになる。 2. atomic なフィルトレーションの場合に、マルティンゲール Campanato 空間上の掛け算作用素が有界となる必要十分条件を求めた。これは 2 進マルティンゲールに対してしか知られていなかったものの拡張である。 3. atomic なフィルトレーションの場合に、マルティンゲール最大関数の有界性を、変動指数 Lebesgue 空間において示した。マルティンゲール理論における変動指数空間での有界性の結果としては初めてのものである。また、この証明において、2 で得られた結果が有効なものであることが明らかになった。 4. マルティンゲール最大関数の BMO-BLO 有界性を示した。これは atomic なフィルトレーションとは限らない場合にも適用できる。そして、それを用いて BLO マルティンゲールの特徴付けを行った。さらに、atomic なフィルトレーションの場合には非負 BMO マルティンゲールで、BLO とはならないものが存在することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度から25年度にかけての研究で、atomic フィルトレーションという場合にはマルティンゲール Morrey-Capmanato 空間、マルティンゲール Morrey-Hardy・Campanato-Hardy 空間上での分数べき積分作用素が有界となる指標を決定した。その際、より一般のマルティンゲール変換に適用できる形で有界性を調べている。また、マルティンゲール Campanato-Hardy 空間では atomic フィルトレーションという場合に限らず行っている。これにより交付申請書に挙げた「研究の目的」の(1)-(3) のうち (2),(3) がほぼ達成できたことになる。 しかし (1) に挙げた「マルティンゲール Morrey 空間の構造」についてはやや難しく、ほとんど進展していない。そのため平成25年度においては方針を転換し、マルティンゲール Capmanato 空間での掛け算作用素の有界性や、マルティンゲール最大関数の変動指数空間における有界性を atomic フィルトレーションという場合に示した。またマルティンゲール最大関数については BMO-BLO 有界性を atomic フィルトレーションという場合に限らず証明している。 まとめると、3つの目的のうち2つはほぼ達成し、1つは進展していないが「研究の目的」にある「実解析的な基礎理論の再構築」というところに立ち戻って方針の転換を行って当初の計画を超えた部分もあるため、おおむね順調に進展している、といえる。
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今後の研究の推進方策 |
代表者の貞末は引き続き分担者の中井の助力を得て研究を進める。そのため勤務先の大学を相互に訪問するなど連絡を緊密にする。 本年度の研究計画であるが、交付申請書の「研究の目的」で (1) としてあげたものが、問題の困難さと他の研究の進展により滞っている。そこで本来は平成24年度に行う予定であった「マルティンゲール Morrey 空間の(前)双対空間の特徴付け」を行いたい。しかしこれまでの経緯から困難が予想される。そのため、別の有力な研究課題として、Morrey 空間ではなく Banach 関数空間の枠組みでマルティンゲール空間の(前)双対空間の特徴付けに取り組むことを考えている。 交付申請書の「研究の目的」で (2),(3) としてあげた一般化分数べき作用素は、理論面の構築については計画をほぼ終えており、有効性の検証の部分が本年度に取り組むべき課題として残っている。本年度はこのことを行う予定である。しかしここまでの理論展開では、なお有効性が乏しい恐れがある。実解析学その他の作用素への適用がまだ困難と判明した場合、ここまでの理論や様々なマルティンゲール不等式を Banach 関数空間の枠組みで再構築し、重み付き空間へ適用できる形にして有効性を高めることを考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
分担者である中井が入院し、予定していた共同研究を中止した。そのことで共同研究の旅費や物品費として予定していたものを使用しなかった。 前述の理由により、本年度の研究計画に遅れが生じることを懸念している。そのため当初予定したとおりの研究発表や研究集会への出席に要する旅費の他に、中井との共同研究の旅費を増額する計画である。また、論文掲載までの時間が短い雑誌に掲載することも考えており、投稿料の増額を見込んでいる。 また、研究計画の変更を行うため、新たな資料や物品の購入が必要な状況である。このため物品費も当初の計画に比べて増額する計画である。
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