研究実績の概要 |
本研究は、実解析学において進展した関数空間の理論をマルティンゲールへ拡張し、マルティンゲール理論の再構築を行うものである。期間全体にわたっての主な成果としては、マルティンゲール Morrey-Campanato、Morrey-Campanato-Hardy 空間の定式化とその基本性質、さらにその上の分数べき積分作用素の有界性の解明がある。これらはマルティンゲールの実解析的理論における基本問題という意義を持ち、研究実施計画の大きな柱であった。もう1つはマルティンゲール Campanato 空間での有界掛け算作用素の特徴付けである。この特徴付けの応用として、マルティンゲール最大関数の変動指数空間での有界性や非負 BMO マルティンゲールであって BLO でないものの存在を示すことができた。最後に Banach 関数空間へのマルティンゲール不等式の拡張である。これは最終年度の研究であるので改めて詳述する。 最終年度において行った主な研究は次の 1,2 である。 1. Banach 関数空間の枠組みで Doob 不等式を考察し、associate 空間での Doob 不等式が、もとの Banach 関数空間での双対 Doob 不等式と同値であることを示した。そして、双対 Doob 不等式が成立するときには Davis 分解が成立することを示し、Banach 関数空間の枠組みまで Davis 分解を拡張した。 2. Banach 関数空間の枠組みで、2次変分関数を基盤とする K-空間を定式化した。この空間の枠組みで atom 分解を考えることにより、2次変分関数に関する Herz 型不等式を、Banach 関数空間の枠組みへと拡張した。さらに Davis 分解と合わせて、Fefferman-Garsia 不等式を Banach 関数空間の枠組みへと拡張した。
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