研究実績の概要 |
分解定理を用いた解析手法を磁気流体力学(MHD)方程式系に対する境界値問題に適用し,次の点を明らにしました. (1)昨年度の当該研究課題において示した非斉次境界条件下の定常的MHD方程式系の弱解の存在定理を見直すことにより,弱解が存在する為の新たな十分条件である「Maxwell TypeのLerayの不等式」を提出しました.このことにより,Navier-Stokes方程式とMHD方程式の境界値問題としての構造の違いが明確になりました. (2)上記(1)で得た定常解の安定性解析を行いました.具体的には,「速度場及び電磁場に対する境界データ全てが十分小さいときの定常解は,任意の初期擾乱に対してエネルギーノルムに関して指数安定である」ことを示しました.証明は,定常解の周りで線型化して得られる初期境界値問題に対してエネルギー評価法を適用することにより行いました. (3)(2)で得た安定な定常解は,境界データ全てを小さくした場合のものなので,解それ自身も「小さい」ものとなっています.従って,「大きな安定定常解」を見つける研究を引き続き行いました.その結果,考えている領域上の調和ベクトルでその接線成分が境界上で0(ゼロ)となるもの全体の成す空間がトリビアルでない場合(例えばトーラスの内部領域を考えた場合)は,「大きな安定定常解」を構成できることを示しました.証明では,最近発表されたN.Kanbayashi, H.Kozono and Okabe (J. Math. Anal. Appl., Vol.409 (2014), 378-392)と類似の議論を用いました.この結果は,領域の位相的特性と「大きな」安定定常解の存在を結びつけた点で,興味深いものと考えています.
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