研究実績の概要 |
1. 直交群の閉部分群Gを考える. 楕円型偏微分方程式を領域と方程式の非線形項がG作用のもとで不変である場合に考察した. もし非線形項にかかる係数関数が領域内部よりも境界近傍に極端に大きな密度を持つとき最小エネルギー解がG不変でないことを証明した. ここで最小エネルギー解とは, レイリー商が最小となる解のことである. 従って, 時間発展の方程式において最も安定した定常解となる. さらに, 二つの閉部分群G, H を考える. ただしHはGの閉部分群とする. 楕円型偏微分方程式を領域と方程式の非線形項がG作用のもとで不変であると仮定する. 非線形項の係数関数が, 領域内部よりも境界近傍で密度が大きい場合を考察する. このとき, Gの軌道とHの軌道が異なるとき, H不変な最小エネルギー解はG不変でないことを証明した. この結果様々な対称領域に対して, ある程度の対称性を持つが強い対称性を持たない正値解の存在が示された.
2. 劣線形熱方程式の定常解の安定性について研究した. この方程式は, 今までにある程度の研究がなされている. その結果, 初期値問題に対する解の非一意性が知られている. しかしながら, 定常解の安定性についてはあまり研究がなされていなかった. 本研究において, 符号変化する解が漸近安定でないこと, 零解が不安定であること, さらに正値定常解が指数漸近安定であることなどを証明した. さらに正値定常解の漸近安定の指数は, 正値定常解の廻りでの線形化作用素の第1固有値であることを証明している. さらにその指数が最適であることも証明した. 空間1次元では, 定常解の構造が零点の個数によって明確に記述されることを証明し, これを使ってすべての定常解の安定性が証明された. その結果, 正値解および負値解は指数漸近安定であり, すべての符号変化解は, 不安定であることを証明した.
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