研究課題/領域番号 |
24540188
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
松本 和子 東京理科大学, 理工学部, 教授 (60239093)
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キーワード | 複素解析 / 多変数函数論 / レビ形式 / 擬凸領域 / 多重劣調和関数 / レビ平坦面 |
研究概要 |
ケーラー多様体の擬凸領域上の多重劣調和関数の性質の研究を通して,領域の境界である実または複素超曲面の性質を調べるのが研究の主目的である.昨年度までに,n次元複素ユークリッド空間内の「実」超曲面までの Euclid 計量による距離関数の Levi form の表示を求めた.また,昨年度,2次元複素射影空間の「複素」超曲面までの Fubini-Study 計量による距離関数の Levi form の表示を求めることができた. 今年度は,これらの研究を踏まえて,2次元複素射影空間内の「実」超曲面までの Fubini-Study 計量による距離関数の Levi form の表示を求める問題に取り組み,まず,最初の結果を得ることができた.その直後,2 次元複素射影空間内に Levi flat な実超曲面は存在しないであろうという予想と関連して,射影空間内の擬凸な超曲面までの距離関数の DF-指数(強多重劣調和性の強さを表す量)は 1/3 以上か,という予想がフランス・ドイツで提起され,求めたばかりの Levi form の表示を用いて,この問題に取り組んだ.しかし,最初に得た表示は,複素解析的な見通しが良くなかったため,表示の改良に取り組んだ.そのために,2次元ユークリッド空間の場合の Levi form の表示を見直すところから始め,DF-指数が(原理的には)計算できる形の表示を得ることに成功した.また,その結果を,2次元射影空間の場合にも適用し,Levi form の表示結果を改良した. それで,DF-指数は 1/3 以上か,という問題に取り組んだが,残念ながら,結果は local な考察では否定的であった.今後は,global な性質に着目する必要があり,そのための Levi form の表示のさらなる改良を考え中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標としていた複素射影空間内の実超曲面までの Fubini-Study 計量による距離関数の Levi form の表示には成功した.また,その結果,2次元複素射影空間内の Levi flat な実超曲面の非存在予想と関連して話題になっていた Fubini-Study 距離の DF-指数について,1/3 以上であるとはいえない(local には)という結論を与えることができた.ここでの結論はネガティブなものであったため,Levi flat な実超曲面の非存在予想の解決はさらに難しくなった印象はあるが,新たな課題は見つかった.
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今後の研究の推進方策 |
2次元複素射影空間内の実超曲面までの Fubini-Study 距離の Levi form の表示は,さらなる改良を進める.この点については,1つの目標は既に見え始めている.手順としては,2次元複素ユークリッド空間の場合の Levi form の改良から,地道な計算を始めることになる.Levi form の表示結果が得られたら,複素射影空間の Levi flat な超曲面の非存在予想と関連して,超曲面の1番曲がっているところでどのようになっているか観察してみたい. また,これまでに得た Levi form の表示結果について,複数の論文にまとめて公表する.
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次年度の研究費の使用計画 |
自分自身での研究そのものは,着実に進めていたが,本務が例年以上に忙しかったことと,一時体調を崩したことにより,国内外の研究者との交流が難しくなった.また,物品(消耗品)の購入時期が,予定より遅れてしまった. 今年度は,国内外の研究者との交流を積極的に持ち,多くの旅費を使用する.既に,いろいろな結果を得始めているので,それを踏まえて,さらなる検討を行うためにも必要なことである.研究に使用するパソコンは,今まで Windows XP で,今後使えなくなったため,研究環境の改善も行う.また,研究成果を発表したり,まとめたりするためにも,研究費を使用する.関連する分野の研究者との研究連絡も,積極的に行いたい.
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