研究課題/領域番号 |
24540190
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
大野 修一 日本工業大学, 工学部, 准教授 (20265367)
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研究分担者 |
泉池 敬司 新潟大学, 自然科学系, フェロー (80120963)
細川 卓也 茨城大学, 工学部, 准教授 (90553579)
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キーワード | 合成作用素 / 乗法作用素 / Hardy空間 / Bergman空間 / Bloch空間 / Besov空間 |
研究概要 |
1 Hardy-Hilbert空間 H2 上の合成作用素のHilbert-Schmidtness に関連して, H2 とDirichlet 空間の間のHilbert-Schmidtness も特徴付けられていたが,基本的な問題である有界性,コンパクト性は調べられていなかった。そこで,具体的な例を作成するとともに,その完全なる特徴付けを行った。また,little Bloch空間と有界解析関数空間H∞の共通部分の空間とBesov空間B_1上でそれぞれ荷重合成作用素の有界性,コンパクト性を特徴付けた。前者は,1980年代に研究されたDouglas環の理論で出てくる興味深い空間であるが,この研究によって合成作用素の新しい研究領域を示したことになる。また,後者は多項式を含む小さな空間で,ほかの場合の手法が使えず,残されていた場合でもあった。 2 研究分担者の泉池敬司(新潟大学フェロー)との共同研究で,1 ≦ q < p <∞のとき Hp からHqへ作用する荷重合成作用素の位相構造について考察した。合成作用素のシンボルとなる関数が絶対値1になる部分の状況に応じて完全に特徴付けられることが判明した。 3 H2 とBloch空間やDirichlet 空間間の合成作用素の位相構造について,研究分担者の細川卓也准教授(茨城大学工学部)と考察していたが,Dirichlet 空間との場合について,泉池敬司(新潟大学フェロー)も加わり,2つの荷重合成作用素の差のnorm 評価を与え,荷重合成作用素の差のcompact 性を特徴付けた。その手法は新しいアプローチと道具を提供している。 4 海外研究協力者の Karel Stroethoff(米・Montana 大)と具体的な荷重 Dirichlet 空間の再生核を計算した結果を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1 H2 とDirichlet 空間間の合成作用素の有界性,コンパクト性は「Composition operators related to the Dirichlet space」とまとめ、Bull. Belgian Math. Soc.に投稿, 受理された。 Little Bloch空間と有界解析関数空間H∞の共通部分の空間上の荷重合成作用素の結果は,「Weighted composition operators on H∞\capB_o」としてまとめ,Glasgow Math. J. に投稿, 受理された。 B_1上の荷重合成作用素については「Weighted composition operators on the minimal Mobius invariant space」としてまとめ,Bull. Korean Math. Soc. に投稿、受理された。 2 研究分担者の泉池敬司との研究で,1 ≦ q < p < ∞ のとき Hp から Hq へ作用する荷重合成作用素の位相構造については「Topological structure of the space of weighted composition operators between different Hardy spaces」としてまとめ、Integral Equations Operator Theoryに投稿,受理された。 3 H2 とDirichlet 空間への合成作用素の位相構造について,研究分担者の泉池, 細川准教授と考察したが,関数空間を自然ないくつかの条件をみたすHilbert(内積)解析関数空間へ拡張し,論文としてまとめ,投稿の準備に入った。 4 K. Stroethoff との荷重 Dirichlet 空間からの荷重合成作用素の結果については投稿の準備に入った。
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今後の研究の推進方策 |
1. Hardy-Hilbert空間上の荷重合成作用素のコンパクト性の特徴付けはこの分野の最大の難問であるが,最近荷重関数が特性関数の場合のコンパクト性がToeplitznessの必要十分条件となる定理が紹介された。具体的で基本的な特性関数の場合でもかなりの難問である。研究分担者の泉池フェローと共に,コンパクト性よりも強い条件である「Hilbert-Schmidtness」について考察を始めたが,十分条件しか出てきていない。まずこの問題について,各々が日本工業大,新潟大学への出張を行い,共同研究を押し進める。 2. 研究分担者の細川准教授とは,Bloch 空間から Hardy-Hilbert空間への合成作用素からなる空間の連結性を特徴付けたが,さらに2つの合成作用素の差の有界性,compact性を考え,位相構造を明らかにしたい。この問題は,さらに一般的な荷重Bergman 空間へ発展させたい。この課題について, 茨城大学工学部,日本工業大間で出張を行い,研究協力者の植木准教授ともあわせてセミナーを実施し,討議を行う。位相構造問題は作用素論をはじめとした諸分野の問題としても興味深いため,研究協力者の瀬戸道生准教授(島根大),泉池耕平講師(山口大)と討議を行うこととなろう。各所属機関への出張を行う。 3 Little Bloch空間と有界解析関数空間H∞の共通部分の空間に続いて,Douglas環の理論に関連したH∞と連続関数空間との和空間で荷重合成作用素の有界性,コンパクト性を特徴付けたい。 また,問題の難解さ等で研究が当初の計画どおりに進まない可能性も考えられるが, 新たな問題展開が出てくる可能性も高い。 むしろ,本研究課題に関係した新たな問題を各分担者,研究協力者らが提起することが考えられる。そうしたときの共同研究体制も十分整っているといえる。
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次年度の研究費の使用計画 |
「次年度使用額」は年度末の大雪と業務に関連して生じた旅費の残金である。 少額のため次年度の旅費内に十分組み込まれるであろう。予定の研究のために, 研究分担者,研究協力者とメールと結果の添付ファイルにより連絡を取りあい,休暇中の各所属機関への出張で共同研究を押し進める。そのための旅費をまず考えている。資料として, 解析関数空間及び作用素論関係図書および学位論文やレクチャーノート等を購入し, 議論,問題作成に役立てる。また、研究の成果の発表,知識取得のために,学会(9月広島大学), 研究集会〈実解析学セミナーなど〉に参加する。 関連分野の知識の交流および獲得のための研究集会「宮代セミナー」を日本工業大学において開催する。
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