研究課題/領域番号 |
24540196
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
藤家 雪朗 立命館大学, 理工学部, 教授 (00238536)
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キーワード | シュレディンガー方程式 / 準古典解析 / レゾナンス / ホモクリニック軌道 / スペクトルシフト関数 |
研究概要 |
まず、Jean-Francois Bony, Thierry Ramond, Maher Zerzeri との共同研究である、ホモクリニック軌道が生成するレゾナンスの漸近分布の研究では、実軸に最も近い第1列のレゾナンスの漸近分布を明らかにした。 Mouez Dimassiとの共同研究である、スペクトルシフト関数の漸近展開の研究では、作用素の関数をレゾルベントを用いて表示するHelffer-Sjostrandの公式を用いた、時間に依存しない方法を導入した。これは、時間に依存するシュレディンガー発展作用素を考える従来の方法とは異なり、多くの困難な点が回避できる。一つの応用として、シュタルク効果を持つシュレディンガー作用素とその摂動に関するスペクトルシフト関数が、対応する古典力学の非捕捉条件の下に、完全な漸近展開を持つことを示し、さらに最初の2項を求めた。この論文は一旦投稿したものの、投稿後に証明方法を格段に簡略化できる事に気がついたため、改めて修正版を投稿し直した。Mouez Dimassiとは、非有界領域におけるtransmission eigenvalueの存在に関する研究に着手した。これは今までとはかなり異なる研究である。 Andre Martinez, 渡部拓也との共同研究である、連立のシュレディンガー作用素のポテンシャルの交差点近傍のレゾナンスの虚部の研究は、証明、計算ともに未だ完成はしていないものの、レゾナンスの虚部が準古典パラメータの5/3乗のオーダーであるとの予測を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長年にわたってこの研究課題で続けて来た、ホモクリニック軌道が生成するレゾナンスの漸近分布の研究が、かなり完成に近づいたと言えるからである。ホモクリニック軌道が一つの場合に限らず、多数ある場合、また、双曲型不動点の数も複数ある場合にも、レゾナンスの準古典極限における漸近分布が、対応する古典力学系のどのような幾何学的量によって決まるかが解明した。これは、レゾナンスの虚部の下からの評価のみしかわかっていなかった前年度と比べて飛躍的に進歩している。
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今後の研究の推進方策 |
ホモクリニック軌道が生成するレゾナンスの漸近分布の研究は、現在100ページを超える大部の論文として投稿する準備を続けている。スペクトルシフト関数の漸近展開の研究については、連立の作用素の場合に、同じく時間に依存しない方法を用いる事で、これまで難しいとされて来た、eigenvalue crossingがおこる場合も扱える事を示したい。transmission eigenvalueの研究については、まず実数のtransmission eigenvalue、引き続き複素平面におけるtransmission eigenvalueの分布を、それぞれ別の方法で考える予定である。連立のシュレディンガー作用素のポテンシャルの交差点近傍のレゾナンスの虚部の研究は、上記予想を厳密に証明して、今年度中に論文として投稿する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に計画している2つの研究集会を、当初予定していたよりも規模を拡大して行うことにしたため(外国からの講演者を増やす)、次年度に必要な資金が増えた。そのため、当該年度では、計画していた出張一部中止するなどの対応をした。 7月に開催する準古典解析のサマースクール、3月に開催する偏微分方程式の研究集会での外国人招待講演者を増やして規模を拡大する。
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