研究概要 |
本研究の非線形移流拡散方程式系は,空間2次元の解の構造に微細な特徴が現れる問題である. 例えば代表的な1粒子(種類)系の移流拡散方程式系である粘菌方程式系は,初期値の臨界点が存在し, 臨界点より大きい初期値では解が有限時間内に爆発し,臨界点より小さい初期値では解が時間大域的に存在する.また半導体方程式系などの2粒子系の移流拡散方程式系についても類似の構造が見られる.2003年Kurokiba-Ogawaの研究では,ポテンシャル場に正に反応する粒子と負に反応する2粒子の動きを記述する2つの移流拡散方程式と1つの楕円型方程式からなる全空間2次元移流拡散方程式系に対して,2次モーメントの方法を使って,初期条件の差が十分大きい場合に,2粒子をそれぞれの動きを示す解の和が,有限時刻で爆発することを示した. また2006年Nagai-Ogawa-Kurokibaの研究では,この方程式系の初期値が十分小さい場合には,その正値球対称解が時間大域的に存在し,しかも一様有界性をもつ事を示した.さらに2009年にはE.Espejo-A.Stevens-J.J.L.Velazquesの研究によって,この空間2次元移流拡散方程式系の爆発解に対して,2粒子の未知関数に関する同時-非同時爆発の分類が行われた. そこで研究代表者は2012年度の研究において,さらに微細な解の構造を調べるため鈴木貴教授(大阪大学),E.E.A. Espejo氏と共同研究を行い,上記の有界領域における2次元移流拡散方程式系の初期値境界値問題に対して,局在化の方法による爆発解の解析及び2005年I.Shafrir, G.Wolanskyによる対数型Hady-Little-Woodの不等式の適用で,2つの解が同時に爆発する際,それぞれ同種粒子の集団に分離する事を証明した.
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