研究課題/領域番号 |
24540201
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
黒木場 正城 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60291837)
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キーワード | 移流拡散方程式系 / 有限時間爆発解 / 時間大域解 / 走化性 / 初期値問題 / 閾値 |
研究概要 |
本研究は粒子とその場のポテンシャルによる粒子の挙動を記述するdrift-diffusion 方程式系の初期値問題である.1種粒子系の走化性生物モデルであるNagai モデル, Jager-Luckhaus系や2種粒子系である半導体デバイス方程式を代表とする移流拡散方程式系は,空間2次元有界領域においてL1ノルムを含むL2ノルムのフレームワークで爆発解と時間大域解に関する解の構造について多くの議論がなされてきた. 平成24年度の本研究では2種走化性生物モデルの移流拡散方程式系の解が,異なる種類の粘菌は互いに分離し,同種の粘菌が凝集する振る舞いを示すことが,数学解析的に明らかとなり,解の微細構造が示された. 平成25年度の研究では,一般化された空間2次元drift-diffusion 方程式系の初期値問題に対する時間局所可解性と有限時間爆発解の存在について取り組んだ.この方程式系の可解性を示すために,重み付きL2関数空間を導入した.関連する前研究であるKurokiba-Ogawa(2003)では,走化性のポテンシャルの勾配量のL無限大ノルムを評価するためにBrezis-Gallouetの不等式を適用した.その際,重み指数が真に1より大きい関数空間であったが,今回の研究では重み指数が1以上の関数空間に拡張することを試みた.走化性のポテンシャルの勾配量のL無限大ノルム評価に対して,Kozono-Ogawa-Taniuchi(2002)の研究を適用し,Besov空間上で, Littlewood-Paley分解および対数型Hardyの不等式を使って可解性を証明することに成功した.さらに有限時間爆発解については,方程式の移流項が正に働くものと負に働くものに分けて,Kurokiba-Ogawa(2003)の研究に帰着させることにより,解が有限時間内に爆発する初期条件を示すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の本研究では2種走化性生物モデルの移流拡散方程式系の解が,異なる種類の粘菌は互いに分離し, 同種の粘菌が凝集する振る舞いを示すことが,数学解析的に明らかとなり,解の微細構造が示された.平成25年度の研究では,一般化された空間2次元drift-diffusion 方程式系の初期値問題に対する時間局所可解性と有限時間爆発解の存在が示された. これらの結果は,一般化された移流拡散方程式系の時間大域解と有限時間爆発解の解の構造及び解の性質に関する研究の新しい結果であり重要な情報である.これらを基にさらに空間2次元、空間高次元初期値問題に関する解の構造,爆発解の特異性の研究が期待される.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題は,多種粒子とその場のポテンシャルによる粒子の挙動を記述するdrift-diffusion 方程式系の初期値問題である.移流拡散方程式系は,空間2次元有界領域においてL1ノルムを含むL2ノルムのフレームワークで爆発解と時間大域解に関する解の構造について多くの議論がなされてきた.昨年度の研究ではKurokiba-Ogawa(2003)の結果を発展させ,一般化された空間2次元drift-diffusion 方程式系の初期値問題に対する時間局所可解性と有限時間爆発解の存在について取り組んだ.平成26年度の研究では,P.Biler(1995)のエントロピー評価を使った空間n次元(n>2)gravitational 方程式の初期値境界値問題に対する爆発解に関する手法を発展させ,空間3次元drift-diffusion方程式系の初期値問題に対して,Shannon-Fisherの不等式の改良を行い,より精度の高いエントロピー評価不等式を使って,解の爆発が起こる初期条件について数学解析を行なう. そのため,共同研究者である小川卓克教授(東北大学大学院理学研究科)、鈴木貴教授(大阪大学大学院基礎工学研究科)との非線形移流拡散方程式系の爆発解と閾値に関する研究について詳しい研究打ち合せ及び情報交換を行なう.さらに本研究と関係のある非線形偏微分方程式の国内および国際研究集会,定期的に行なわれるセミナーに出席し,成果発表,研究者との討論,情報交換を行なう.また室蘭工業大学において参加者20名から30名規模の研究集会を企画し,非線形偏微分方程式についての最先端的な情報収集を行なう.
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次年度の研究費の使用計画 |
海外への出張の回数が予定より少なかったことによる. 次年度においては国際研究集会への出席などの海外出張の回数を増やす.
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