研究代表者は,P.Biler(1995)のエントロピー評価を使った空間n次元(n>2)gravitational 方程式の初期値境界値問題に対する爆発解に関する手法を発展させ,空間3次元drift-diffusion方程式系の初期値問題に対しShannon-Fisherの不等式の改良を行い,より精度の高いエントロピー評価不等式を使って,解の爆発が起こる十分条件について数学解析を行なった.その爆発解の十分条件はCorrias-Perthame-Zaag(2004)が示した爆発条件とは相違な条件であり,解が爆発する初期条件を新たに示すことに成功した. さらに研究代表者は,単成分の移流拡散方程式系で得られたこれらの数学解析の情報を適用して,粒子の成分数を一般化した高次元連立移流拡散方程式系の初期値問題に対する時間大域解と有限時間爆発解について研究を行った. 時間大域解解については、その時間大域的挙動は臨界空間ノルムで表現された初期条件の大きさと方程式の係数の符号に応じて分類され,特に初期条件が小さい場合には方程式の係数に関係なく時間大域挙動が決定され,適当な条件の下で解は熱核と同様の次数で減衰することが明らかとなった.また初期条件が大きい場合には,解の挙動は,方程式系の集中性および消散性を司る各係数の符号によって決定され,単成分系では発生しない解の挙動が考えられる.この観点から研究代表者は,小川卓克教授(東北大学)と共同で,Calvez-Corrias-Ebde(2012)の結果を精密化してShannon-Fisherの不等式の拡張を行ない,多成分である連立移流拡散方程式から導かれる多成分自由エネルギーを使った爆発解の十分条件を示した.
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