最終年度には主に3つの研究成果があった. 第一に,あるクラスの量子アフィン・リー環からq-振動子代数のテンソル積への準同型を構成した.これを四面体方程式に応用し,これら量子アフィン・リー環のモジュラーダブルの表現と可換な量子R行列を構成した. 第二に,C2型の量子座標環の同型写像に付随した多項式を導入し,3次元反射方程式の解に対する新しい明示式を得た. 第三に,3次元 R と L の積に対して簡約操作を実行し,Yang-Baxter方程式の解を構成した.更に,RとLの積に応じてホップ代数を定義し,得られた解がその量子R行列であることを証明した.これらホップ代数はある系列の量子アフィン・リー環,量子スーパーリー環のアフィン化を含む一般化量子群の例になっていることを指摘した.
研究期間全体を通じて,四面体方程式や3次元反射方程式など,3次元可積分系で重要な役割を果たす方程式とその解,2次元可積分系との関係などについて多くの知見が得られた.四面体方程式については,Kapranov-Voevodsky による量子座標環のSoibelman表現の同型写像と Bazhanov-Sergeevによるq-振動子代数の同型写像が一致することを初めて示した.C2とB2の量子座標環の考察からはIsaev-Kulish による3次元反射方程式の初めての解を構成した.量子展開環の正部分のPBW基底の遷移行列と量子座標環の表現の同型写像が一致することを全てのリー環に対して証明した.3次元RとLの積から2次元簡約によりYang-Baxter方程式の広範な解を構成し,付随する量子群とその表現を明らかにした.量子クラスター代数との関係は今後の課題である.
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