研究課題/領域番号 |
24540207
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
中島 主恵 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (10318800)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 非線形反応拡散系 / 遷移層 / 積分項 / 国際研究者交流(中国) / 国際研究者交流(アメリカ) |
研究実績の概要 |
昨年度から引き続きある一次元区間上の遺伝子頻度のモデルを研究した。このモデルは空間非一様な係数をもつ非線形の反応拡散方程式を用いて表される.拡散係数を微小にするとこの方程式の解は遷移層を形成する.遷移層は1つだけでなく多数現れることがある--- 多重遷移層 --- をもつことがある.本研究では多重遷移層をもつ定常解を構成し,定常解の多重遷移層の位置は方程式のもつ空間非一様性により完全に決定されることを数学的に厳密に証明した.また定常解の安定性を解析することにより、これが唯一の定常解であることを証明した.以上の結果を論文にまとめた。さらにこの結果を多次元に拡張することを目指し、上記論文中一部の定理を多次元に拡張することに成功した。 さらに本年度は上記の遺伝子モデルにパンミクシーの効果を加えたモデル方程式を考えた.パンミクシーの効果とは交配により空間的に遺伝子が広がっていく効果を表している.以上に拡散と空間非一様性が微妙なつり合いをとって遷移層を形成する現象について述べてきたが,さらに積分平均の効果を加える.この積分平均の項も均一化を促すものである.拡散,空間非一様性,積分平均の3つの要素はつり合いをとって定常遷移層を形成することができるのか否かという疑問を解決する.この方程式に関し,Li-申請者-Niによる Nonlocal effects in an integro-PDE model from population genetics (投稿中)では拡散係数とパンミクシーの効果が微小な にたいし定常解が存在することが変分法を用いて証明されている.本研究では比較定理を用いる方法でパンミクシーの比較的大きい場合について定常解の存在,さらに定常解がもつ遷移層の位置,安定性などの詳細な性質を明らかにする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の大きな目標である一意性を厳密に証明することができたから.
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今後の研究の推進方策 |
パンミクシーの効果(積分項)を含む方程式の定常解を構成し,定常解の性質を解析した結果を論文にまとめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究をすすめるにつれ,想定していなかった定常解の存在が明らかになった.研究をより完成度の高いものにするため,この定常解の解析を進めた.そのため華東師範大学での発表,論文作成などを次年度に繰り越すことにした.
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次年度使用額の使用計画 |
華東師範大学における発表,研究連絡.論文作成.
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