コンクリート中性化や形状記憶合金の形状変化を記述する非線形偏微分方程式のシステムでは,ヒステリシスの数学的扱いが困難なため,適切性を示すことが容易ではなかった。本研究では,非線形偏微分方程式の古典的な結果を適用することで,システムに対する初期値境界値問題の解の一意性を示すことができた。また,コンクリートの腐食過程を表現するマルチスケールを用いた数理モデルの適切性や解の時間無限大での挙動に関する結果を得ることができた。この考察を通して,ヒステリシスのマルチスケールを用いた表現を着想するに至り,水分吸着現象を記述する自由境界問題を導出し,解の時間に関する大域的存在と一意性を証明することができた。
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