研究課題/領域番号 |
24540211
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
角 大輝 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40313324)
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研究分担者 |
佐藤 譲 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (30342794)
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キーワード | 有理半群 アメリカ / ランダム複素力学系 / フラクタル / カオス / 反復関数系 / ジュリア集合 / 複素特異関数 / 乱雑性誘起現象 |
研究概要 |
ランダム複素力学系と有理関数の半群(以下有理半群という)の力学系を研究した。 ランダム複素多項式力学系においては、大概のシステムにおいて、(通常の意味では)カオス性がなくなること(協調原理)の論文を雑誌に発表した。また、このような乱雑性誘起現象(通常の力学系では起こらない、ランダム力学系特有の現象)の研究を行った。乱雑性誘起現象(または雑音誘起現象)は物理サイドで非常に活発に研究されており、それらについて北海道大学の佐藤譲氏と何度も議論を重ねた。 ランダムな複素力学系と有理半群の同時発展を目指した基礎理論に基づき、2(または3)元生成で臨界値集合が有界な多項式半群の空間を詳しく調べ、以前の結果をさらに精密化し一般化した。特に、高木関数の複素平面上版をも含めた様々な複素平面上の特異な関数の、ジュリア集合上での微分不可能性などの、ランダム化によるカオス消滅後に残る複雑さを詳しく解析した。J. Jaerisch氏と共同研究を行って、それらの関数の各点ヘルダー指数に関するマルチフラクタル解析を行って論文にまとめ、学術雑誌に投稿した。また、Jaerisch氏と、無限生成双曲的有理半群の力学系を研究し、それを応用して、有限生成で双曲的とは限らない有理半群の力学系を研究して論文にまとめ、学術雑誌に投稿した。 さらに、R. Stankewitz氏を大阪大学に招き共同研究を行い、有理半群のジュリア集合を描くプログラムの数学的妥当性を支える定理を示し、論文にまとめ学術雑誌に投稿した。 M. Urbanski氏との共同研究において、開集合条件を満たすとは限らない双曲的有限生成有理半群のジュリア集合のハウスドルフ次元を調べ、横断性条件という緩やかでかつチェック可能な条件のもとで、Bowenの公式がほとんどすべてのパラメータで成り立つことを論文にまとめて学術雑誌に出版し、さらに研究を発展させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度においては、Advances in Mathematicsという非常に引用度の高い雑誌に2本の論文を掲載できたほか、計3本の論文を雑誌に掲載することができた。また、J.Jaerisch氏やR.Stankewitz氏との共同研究をとおして、有理半群ならびにランダム複素力学系の結果を3本の論文にまとめて、学術雑誌に投稿することができた。さらに、有理半群とランダム複素力学系の多くの話題において進展があり、それらを現在、論文にするべく準備する段階にまでこぎつけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
有理半群ならびにランダム複素力学系理論の両方を同時に発展させて、両者の分野が交錯しかつほかの話題と深く絡んでいくような、豊かな理論を作っていく。そのために、M.Urabanski氏、J.Jaerish氏、R.Stankewitz氏らと共同研究を行い、彼らと国際会議で議論するほか、場合によってはM.Urbanski氏やR.Stankewitz氏を大阪大学に招いて、議論を深めていく。また、物理サイドでは乱雑性誘起現象(または雑音誘起現象)が非常に盛んに研究されているので、北海道大学の佐藤譲氏や京都大学の矢野孝次氏らと乱雑性誘起現象がどのような状況で実際に起きるか、そのメカニズムが説明できるか、を数学、物理学の両方の見地から探っていく。さらに、ほかの研究者にもランダム(複素)力学系の研究成果を発表して研究結果の意義と重要性をアピールし、数学・物理・化学・生物など様々な分野のより多くの研究者と研究を行ったり交流して大きなグループを作っていくことを目指したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
京都大学での力学系セミナーほかの研究集会に参加するためにとっておいた額だったのですが、教育関係の時間がかかりすぎてセミナーに参加することができず、金額が余る結果となりました。 2014年度は京都大学での力学系セミナーに参加し、またほかの研究集会にも参加して使用いたします。
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