研究課題/領域番号 |
24540212
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
鄭 容武 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20314734)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 力学系理論 / 大偏差原理 / マルチフラクタル解析 |
研究概要 |
研究課題である力学系の大偏差原理およびマルチフラクタル解析について、以下の成果をそれぞれ得た。 大偏差原理については、平坦でない多峰写像力学系が、次の3つの性質、すなわち、(1)時間発展による微係数の特異値における指数的増大性;(2)特異軌道の劣指数的緩回帰性;(3)位相混合性を持つとき、レベル2の大偏差原理が成り立つことがわかった。その系として、ほとんどすべての確率的2次写像力学系に対して大偏差原理が成り立つことが示された。この成果を、スイス連邦工科大学ローザンヌ校において開催された国際研究集会"Large deviations and thermodynamical formalism"において発表した。 マルチフラクタル解析については、十分多くの2次写像力学系に対して、Birkhoffスペクトルの具体的表示を熱力学形式論を用いてあたえ、その連続性を示した。この成果をまとめ、"Multifractal formalism for Benedicks-Carleson quadratic maps"という表題で論文を執筆した(雑誌"Ergodic Theory and Dynamical Systems"に掲載予定)。さらに、イタリア・トリエステの国際理論物理学センター(ICTP)、京都大学数理解析研究所において開催された研究集会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した「研究の目的」のうち、平成24年度に特に重点をおいた課題である、典型的なカオス力学系に対する大偏差原理の判定について、期待どおりの成果を得ることができた。さらに、国内連携研究者および海外研究協力者との情報交換や議論を通じて、今後の研究の方向性が明確になった。
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今後の研究の推進方策 |
国内連携研究者および海外研究協力者との研究打合せおよび情報交換を密に行う。6月に中国・上海交通大学において開催される第2回環太平洋数学協会会議(PRIMA 2013)に参加し、これまでの研究成果について発表し、情報収集を行う。また、国内外で開催される力学系、エルゴード理論および確率論関連の研究集会やセミナー、勉強会に積極的に参加する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究において、国内・海外の力学系理論、エルゴード理論および確率論研究者からの情報収集や議論が重要である。したがって、研究に必要な経費のうちの多くの部分を旅費が占めることになる。連携研究者との研究打合せ、研究集会・セミナーでの情報収集および成果発表のための国内・海外旅費(60万円)、計算機および新刊図書などの環境整備のための物品費(20万円)、謝金およびその他(各5万円)の使用を計画している。
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