研究概要 |
p調和写像熱流の正則性条件について研究した. 1. 像の小さい弱解がヘルダー連続であるための条件, 正則性条件, 構築した(業績表参照). この正則性条件は,幾何学的に自然なものであり,実際, p=2の古典的な結果を含む. また,同条件のもとさらに空間一階導関数もヘルダー連続である. この正則性条件によって,p=mの場合に,m調和写像熱流の像の小さい弱解が空間一階導関数とともにヘルダー連続であること,および,高次元定平均曲率曲面の熱流の像の小さい弱解が空間一階導関数とともにヘルダー連続であることを証明した. 2. p調和写像熱流のなめらかな解に対する先験的評価を研究した. とくに,p調和写像熱流に対して, あるスケールエネルギーのスケール変数に関する単調性公式を証明し, ある新しい正則性条件を構築した(論文投稿中). 3. 月一回土曜日,熊本大学応用解析セミナーに関連研究者を招き, 研究打ち合わせおよび情報交換を行った. 当セミナーでの講演を報告集にまとめた. 平成24年度分を印刷し関係研究機関に配布した. また, 京都数理解析研究所, 早稲田大学, 東北大学, 山口大学において関連研究者と研究打ち合わせを行った. とくに, 「微分方程式の総合的研究」(於東京大学数理科学研究科)において, 総合講演(survey講演)を行った. 4. Sweden,Uppsala大学における国際研究集会に招聘され, 研究発表と関連研究者との研究打ち合わせを行った. 5. p調和作用素の正則性評価に関連して,Juha Kinnunen教授,Tuomo Kussi准教授との研究打ち合わせを行った(Aalto UiversityへのJuha教授による招聘). とくに, p-Yamabe flowに関係する, p調和作用素を含む二重非線形作用素の正則性評価について共同研究を行った(論文作成中).
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
p調和写像熱流の正則性条件について, p=mの場合,目的としていた, m調和写像熱流の正則性を達成した. 一般のp調和写像熱流に対しては, 解が小さいという条件のもと, 幾何学的に自然なスケールエネルギーによって正則性条件を構築した. 一方で, このスケールエネルギーが小さいという条件を解の像の小ささによって与える問題は, 昨年度以来未解決のままである. 一方, p調和写像熱流に対するスケールエネルギーの単調性公式,およびそれによる,ある正則性条件を構築した.
|
今後の研究の推進方策 |
p調和写像熱流に対するスケールエネルギーのスケール変数に関する単調性公式を本年度構築したが,この局所化評価を新年度計算する.この評価にもとづいて,大きな初期値に対して,弱解の時間大域存在とその正則性について研究する. また, p調和作用素に対するHarnack型不等式,およびBarenblatt基本解の応用を研究して,一般のp調和写像およびその熱流の像の小さい解の正則性を研究する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究打ち合わせのための旅費が,年度末になり不足した.これは外国出張旅費(Sweden,Institute Mittag Leffler)の支出が思いのほか多かったためである. 年度末の学会出張(東京)の旅費を所属機関の別経費で賄ったため,結局この旅費分(58460円)が余った. 研究費の使用計画は, この次年度使用額と合わせて, 研究計画書の使用計画とおおむね同様に使用する予定である. 実際, この次年度使用額は研究打ち合わせのための旅費1回分, もしくは, あるいは合わせて, 関係する文献の購入に当てる予定である.
|