研究課題/領域番号 |
24540218
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
竹内 慎吾 芝浦工業大学, システム工学部, 准教授 (00333021)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 一般化ヤコビ楕円関数 / 一般化三角関数 / 退化特異性 / 非線形拡散 / p-Laplacian |
研究概要 |
ヤコビ楕円関数と一般化三角関数はともに三角関数の一般化として19世紀に現れた関数であり、物理学や数学の諸分野に広く応用されている。研究代表者は2012年の論文で、ヤコビ楕円関数を一般化した「一般化ヤコビ楕円関数」を定義した。この新しい関数は母数と呼ばれるパラメータを含み、特に母数が零の場合に一般化三角関数と一致する。したがって一般化ヤコビ楕円関数は、ヤコビ楕円関数と一般化三角関数という、三角関数の二つの大きな一般化を統一した関数になっている。 一般化三角関数がp-Laplacianの固有関数であることは古くから知られている(例えばDrabek-Manasevich, 1999)。このことと、ヤコビ楕円関数がダフィング方程式を満たすことから、研究代表者が定義した一般化ヤコビ楕円関数はp-Laplacianを主要部とした典型的な双安定型微分方程式を満たすことが類推され、実際そのことを証明できる。ゆえにこの新しい関数は、本研究課題において重要な役割を果たすことが期待される。 以下、2012年度の主な活動を報告する。一般化ヤコビ楕円関数をp-Laplacianの双安定微分方程式に対する境界値問題へ応用した結果を得て、7月上旬にフロリダ州オーランドで行われた国際会議AIMS2012に参加し、その成果を発表した。特に具体的な解表示を利用してある種の解がp/2-Laplacianの固有関数になっていることを紹介し、好評であった。 11月上旬には数理解析研究所で行われた研究集会「常微分方程式の大域的定性理論とその応用」(田中敏氏(岡山理大))に参加し、AIMS2012よりも詳しい内容で発表を行った。一般化ヤコビ楕円関数に関する論文は、2012年の研究代表者の論文を皮切りに最近出始めたがまだ少ないので、講究録には一般化三角関数を含めたサーベイを著し、それが出版予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が定義した一般化ヤコビ楕円関数に関して、講演等により徐々に認知度が高まってきた感があるが、自身の研究活動において新しく決定的な成果が得られなかったという点で「やや遅れている」と回答する。
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今後の研究の推進方策 |
フーリエ級数の理論で知られているように、三角関数系はq乗可積分な可測関数全体の集合でSchauder基底を生成する。ここで1<q<∞は任意の実数である。Binding-Boulton-Cepicka-Drabek-Girgは2006年の論文でこの結果を一般化三角関数系に拡張した。ただし彼らの結果は一般化三角関数の指数pが1にあまり近くないという条件の下で証明されており、任意の1<p<∞について成り立つかどうかはまだ未解決である。この条件を外せるかどうかを考えている。 一般化ヤコビ楕円関数系がSchauder基底を生成することは、2012年度の研究代表者による研究において、やはり指数が1にあまり近くないという条件の下で証明できている。一般化ヤコビ楕円関数はその母数を変化させることで異なる指数の一般化三角関数を補間する働きがあるので、この性質を利用して一般化ヤコビ楕円関数および一般化三角関数の未解決問題にアプローチすることを考えている。 関数としての一般的な性質を調べた後、これらの特殊関数を退化特異型微分方程式の解構造の解明に役立てていきたいと考えている。そして研究成果を国際的な研究集会で発表することにより、国内外の研究者と広く情報交換していきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する研究費が生じた主な理由として、当初の計画よりも出張費がかからなかったことが考えられる。基金化により次年度の予算が前倒しで使えるようになったことから、3月末に出張に行くなどしてこの次年度使用額相当の予算は既に使用していると思われる。
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