研究課題/領域番号 |
24540218
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
竹内 慎吾 芝浦工業大学, システム理工学部, 准教授 (00333021)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | p-Laplacian / ヤコビ楕円関数 / 楕円積分 / 算術幾何平均 |
研究実績の概要 |
研究代表者は過去に、ヤコビ楕円関数とその周期である完全楕円積分をp-Laplacianへの応用に向けて一般化した「一般化ヤコビ楕円関数」と「完全p-楕円積分(詳しくはBorweinによる一般化楕円積分とよばれる超幾何関数に対して、一般化三角関数を用いたLegendre形式を与えたもの)」を導入した。H26年度はこれらについて以下のことを研究した。 ①一般化ヤコビ楕円関数系が任意のLebesgue空間において、モジュラスの適当な条件のもとで基底であることを証明した。特にp=2の場合を考えると、古典的なヤコビ楕円関数系が基底であることが示されたことになる。ヤコビ楕円関数系は完全であることがCraven(1971)により知られているが、これは直交系ではないため基底であるかどうかは知られていなかった。この結果はAIMS2014(2014年7月)で発表し、CPAA(13,2014)に受理され掲載された。 ②完全p-楕円積分の応用として一般化円周率(p=3)の計算公式を開発した。p=2の場合は算術幾何平均(AGM)を用いた円周率のGauss-Brent-Salaminの公式が有名である。SalaminとBrentは完全楕円積分に関するLegendreの関係式とGaussによるAGMと楕円積分の関係式を組み合わせて独立にこの公式を得た。そこで研究代表者は完全p-楕円積分に対してLegendre型の関係式を導き、また完全p-楕円積分を用いることでRamanujanによる3次変換公式の簡潔な別証明を与え、Gaussの関係式に対応するものとしてこれを用いることで、p=3の場合の一般化円周率の計算公式を開発した。この結果は論文としてまとめ、現在投稿中である。また最近、一般化円周率(p=4)の計算公式の開発もできており、こちらはプレプリントとして準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
空間1次元のp-Laplacianの固有値・固有関数の性質を調べることは、本研究課題において大変重要なことである。研究代表者の最近の研究はこれらに対して数論的な性質を調べたもので、非線形微分方程式の解の性質で従来の研究では発見できなかったものがこうした研究によって得られることを期待する。
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今後の研究の推進方策 |
完全p-楕円積分の数論的な性質についてもう少し調べる必要があると感じている。例えばモジュラー方程式は重要であると考えている。同様なことはBorweinの一般化完全楕円積分とよばれる超幾何関数のクラスに対してVuorinen等によって考えられているが、我々の与えたLegendre形式で考えると見通し良く調べられることを期待している。 またこれまでの数論的な研究で得られた成果を微分方程式の研究に反映させることも行っていかなければならない。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度の予算締め切り後にも使用したため額はもう少し低いはずだが、国内出張で想定したほど旅費がかからなかったことが考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
国内出張の旅費に充てる予定である。
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