研究課題/領域番号 |
24540219
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
室谷 義昭 早稲田大学, その他部局等, 名誉教授 (90063718)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 関数方程式の大域理論 / 数理モデル / 感染症モデル / 大域漸近安定性 / Lyapunov 関数法 |
研究概要 |
初年度では、時間遅れをもつ SIR 感染症モデルの安定性解析のこれまでの研究をベースに、感染症数理モデルの基本再生産数に関する大域漸近安定性理論の発展、特に、Lyapunov 関数法や単調法による、SIRS感染症モデルや、グループモデルへの応用、並びに、これらの離散モデルへの応用を目指し、多くの成果をあげることが出来た。 まず、lytic and nonlytic モデルの大域漸近安定性を完全解決し、共著者の一人のスペインのBCAM 研究所在所中に所長の薦めで、スペイン応用数学会の雑誌 SeMAに投稿し、掲載された([8])。ついで、Beretta and Breda (2011) が提案した、SEIR 感染症モデルの、部分解決ではあるが、単調法の応用に成功し、ノートとしてまとめ、DCDS-Bに掲載された([7])。 一方、グループ感染症モデルへの応用として、当時提案された、n patch モデルの実用的解析法をヒントに、それを含むグループモデルでの、直接グラフ理論を使わない, リヤプノフ汎関数法での大域漸近安定性理論を確立した([4])。この結果は、他の関連するグループモデルへの応用が期待でき、その一つとして、グループSIRS 感染症モデルの論文が、NA RWA に掲載された([6])。 その他、遅れがない連続感染症モデルの大域漸近安定性と対応する性質を持つ離散化モデルとして、後退オイラー法があり、具体的にSEIS モデルやSIRS モデルに応用した論文がJDEA とIJBに相次いで受理された ([5]と[3])。また、遅れ付きSIRS モデルタイプのコンピュータvirusモデルへの応用 ([2]) と、平衡点が3個もある viral infection モデルの大域漸近安定性の成果で、特に、permanence 証明に新しい手法を開発し、AMC により受理された ([1])。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、まず、これまでの研究を論文として成果に残すため、努力した。その結果、lytic and nonlytic model や、離散モデルでの成果に繋がった。 一方、新しいモデルにもチャレンジし、最近発表されたばかりの SEIS 感染症モデルやコンピュータ・virus モデルでの、部分解決にも敢えて取り組み、成果に残せたことは大きい。中国・天津工科大学の DR. Huaixing Li 講師との共同研究も進み、 最大の成果は、グループ感染症モデルや、viral infection モデルなどで、大域漸近安定性の理論の、実用的な成果を得たことに尽きる。これにより、来年度の関連モデルへの応用による成果が期待できる。 今回、釜山以外予定した他の海外出張が都合で中止となり、急遽、ポルトガル・リスボン大に出張し、Teresa Faria 准教授との効果的研究が出来、共同研究ができた点は大きい(現在も進行中)。また、感染症モデルの大域漸近解析理論と他のモデルとの関連性にも気づかせて頂いた。今後の研究に役立つと考える。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は、今回確立したグループ感染症モデルのSVIR 感染症モデルなどの関連モデルや、nonresident コンピュータ・virus モデルなど、新しいモデルへの、大域漸近安定性理論の応用、また、permanence での正の下界を具体的に求める理論や離散モデルなどへの応用を求めたい。また、」感染症モデルの大域漸近安定理論を他の生物モデルへの応用も考えたい。例えば、ポルトガル・リスボン大の Teresa Faria 准教授との、feedback controls モデルでの共同研究など。 26年度はこれらの研究の進展度合いにより、遣り残した部分や、さらに、新しく発展し得る研究テーマに積極的に挑みたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度研究費の使用計画として、情報収集や共同研究での海外出張として、ハンガリー・セゲド大学の Gergely Rost 教授や中田行彦リサーチ・アソシエイトや、イタリア・ナポリ大学の Eleonola Messina 教授や Giuseppe Izzo 講師などとの共同研究での1・2週間の海外出張を予定している。
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