研究概要 |
非有界作用素環に関するクロス積は"domain problem"等により今まで定義すらできていなかった。井上は海外共同研究者のFragoulopoulou(アテネ大), Kuersten(ライプチヒ大)と共に23年度までにO*-クロス積, 特に, von Neumann 代数の自然な非有界一般化であるGW*-代数のクロス積(GW*-クロス積)を定義し, その基本的性質を調べた。24年度に我々は局所コンパクト群Gが可換で action が spatial であるときO*-クロス積とGW*-クロス積の双対定理について研究をすすめた。その研究のためにはGW*-代数のテンソル積の研究をする必要があり, 井上はFragoulopoulou, M. Weight(ケープタウン大)とこの研究をすすめ、次の定理を得た。 [定理] Mを閉O*-代数, Gを局所コンパクト群, αをGのM上へのactionとする。そのときGW*-クロス積R(M,G,α)は, Mの弱bicommutantとG上の2乗可積分可能な関数のつくるHilbert空間上の有界作用素全体によって定義されるGW*-テンソル積のあるfixed point 代数となる。 さらに, この結果をもとにGW*-クロス積の双対定理に関して次の定理を得た。 [定理] Mを閉O*-代数, Gを可換局所コンパクト群, αをGのM上へのspatial actionとする。そのときGの双対群とαの双対actionによりGW*-クロス積R(M,G,α)のGW*-クロス積が定義でき, ある自然な条件のもとにそれはMのbicommutantとG上の2乗可積分可能な関数のつくるHilbert空間上の有界作用素全体によって定義されるGW*-テンソル積と同型である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に得られた結果を基にして, 我々は modular action によるGW*-クロス積の研究をすすめる。GW*-代数Mに冨田-竹崎理論が展開できるベクトル(標準ベクトルとよぶ)が与えられたとき modular action が定義できる。このことよりGW*-クロス積M(a) が考えられる。このM(a)に対して次が予想される。 1. M(a)はfaithful normal semifinite trace をもつ。 2. MはM(a)のdual actionによるGW*-クロス積と同型である。 FragoulopoulouとKuersten は平成25年度中に福岡大学等を訪れ, この研究をすすめる。また, 井上は, Fragoulopoulou, Kuerstenとこれらの予想の解決をはかる。
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