研究課題/領域番号 |
24540227
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
蜂巣 泉 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (90135533)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超新星爆発 / 連星系の進化 / 白色矮星 / 恒星風 / チャンドラセカール限界質量 / 質量移動 / 角運動量 / 炭素核燃焼 |
研究概要 |
本研究の目的は、Ia型超新星の最新の観測結果を統一的に説明する、新たな連星進化モデルを構築し、Ia型超新星の起源を理論面から明らかにすることである。特に、最近注目される次の2点:(1) チャンドラセカール限界質量を大きく超える白色矮星が爆発したとしか考えられない、非常に明るいIa型超新星の起源、および (2) 質量降着によりスピンアップし、チャンドラセカール限界質量を超えた白色矮星がどこまで超新星爆発を引き延ばせるか、に焦点をあてる。 今年度の計画は連星の進化計算に、次の新しい2点を入れてIa型超新星の出現率をモデルに基づいて推定することにあった。(1) 白色矮星の回転を考慮して、スーパー・チャンドラセカール質量白色矮星が実際にどの程度できるのかを推定した。これを実現するため (2) 白色矮星からの質量降着新星風により、伴星から質量がはがされる(mass-stripping)の効果と質量移動率を正確に計算した。ここで重要な点は、白色矮星のスピンアップ/スピンダウンの効果である。これにより、チャンドラセカール限界質量を大きく超える白色矮星を進化計算の中で実現した。遠心力により、中心密度を低く保てるので、たとえチャンドラセカール限界質量を大きく超えても白色矮星中心の炭素には着火せず、爆発は延期される。その後、白色矮星が角運動量を失ってスピンダウンしてから、中心密度が上昇し爆発する。その間、伴星はヘリウム白色矮星へと進化する可能性があるので、爆発時には爆発殻中に水素を含まない、また断面積が小さくなることで、衝撃波が伴星にあたることによる光度上昇が無い、などのIa型超新星の最近の観測結果を統一的に説明することができるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初期の目的は、白色矮星の回転と伴星からの質量はがれ(mass-stripping)の 効果を入れて、どのような連星パラメータを持つ系がスーパー・チャンドラセカール質量のIa型超新星として爆発するのかを調べることにあった。(a) 連星系の初期状態は、C+O白色矮星と太陽組成を持つ主系列星の連星である。時間が経つと、主系列星は半径がふくれ、ロッシュ・ローブを満たす。この段階では、白色矮星はすでに形成され、かつ、冷却しているとする。この初期条件から出発し、(b)主系列星の質量が2倍の太陽質量を超えていると、伴星からの質量移動率が大きくなり、白色矮星の外層はふくれ、白色矮星表面から質量降着新星風が吹く。この質量降着新星風を考慮して、実際に進化を計算できるコードを完成した。さらに (c) 白色矮星からの新星風は、伴星表面に衝突し、その一部をはがす。この質量はがれの効果と伴星の進化コードを同時に解いて、正確な質量移動率を求めることができるようになった。 以上のことが完成したために、初期の目的である、チャンドラセカール限界質量を超える白色矮星の出現率を実際に求めることができた。この点では目標達成度はほぼ100%と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、特に、低金属量(Z < 0.02)の場合について調べる。 (1) 一般に星からの質量放出が金属量に依存することは良く知られているが、特に質量降着新星風は、金属量依存性が大きい。その理由は、この恒星風の加速が、OPAL吸収係数の15万度付近の鉄のラインの非常に大きなピークによっているからである。私たちの見積もりによれば、太陽組成の10分の1程度のところに、質量降着新星風が効率的に吹くか、それとも吹かないかの境界がある。 (2) また、伴星からの質量移動率(熱的タイムスケール)も、その星の金属量に依存する。一般に、金属量が少ないと、星は半径が小さく、明るくなる。このため、熱的なタイムスケールが短くなり、質量移動率が大きくなる。さらに、伴星の半径が小さくなれば、重力ポテンシャルが深くなる分、質量はがれ(mass-stripping)の影響はより小さくなる。 これらの効果を取り入れることで、金属量依存性を見積もり、銀河の化学進化 に、Ia型超新星がどのように影響を及ぼすのかを解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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