研究課題/領域番号 |
24540230
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
太田 耕司 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50221825)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 天文 / 電波天文学 / 光赤外線天文学 |
研究概要 |
ALMAによる分子ガス(CO(5-4))観測が実行され、そのデータ処理解析を行った。まだ解析途中であるが、CO輝線検出数は少なく、当初予定していた金属量との関係についてはスタッキング解析をしないといけないことになり、その方法を考察した。一方、CO輝線が検出された銀河の1つに、多くのガス雲が付随しているものがあることがわかってきた。ハッブル宇宙望遠鏡による静止系可視光での画像を調べたところ、楕円銀河の特性を示すことがわかり、楕円銀河形成の最終段階を見ているのではないかと考えられる。楕円銀河形成プロセスを理解する上で非常に貴重なサンプルになると考えられる。追究観測のための観測提案を行った。これに加えて、ALMAの画像に偶然写っている銀河の数数えを行い、これまでで最も暗いミリ波銀河のナンバーカウントを行った。 一方、銀河形態の研究については、赤方偏移が2付近から0.5付近までの星形成銀河のうちある程度以上星質量の大きな銀河を選んで、いくつかの条件を課したサンプルを作成した。ハッブル宇宙望遠鏡によるこれらのサンプル銀河の静止系可視光での画像を用いて、みかけの軸比分布を調べ、統計的に銀河の三次元構造を調べた。その結果、赤方偏移2-1付近では、円盤状の構造は持つものの、その形状は丸い円盤ではなく、棒状の構造を示すことがわかった。この棒状の構造は赤方偏移が下がるにつれて丸くなって、赤方偏移0.9程度以下の宇宙では、近傍宇宙に見られるような丸い円盤銀河になっていることがわかった。理論的な研究を参考にすると、銀河中心のバルジないしは超巨大ブラックホールの成長に伴って、円盤の形が丸くなってきた可能性が考えられる。円盤銀河の形態獲得と円盤の進化に関連があることが示唆され、大変意義深い結果であると考えられる。この成果については学会等で発表し、現在論文執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ALMAの観測結果の解析については、観測時期が遅くてデータの配布が遅れたこともあり、予定より若干遅れている。しかし、一方で意外な驚くべき結果もでてきたことで、その解析に時間がかかっていることも要因なので、必ずしもネガティブな評価にはならないと判断される。また、この意外な結果によって予想以上の成果が得られる可能性が出てきた。また、野辺山宇宙電波観測所で、同様の観測を行いつつあり、これは予定以上と考えられるが、平成25年度も観測を続行するので、評価は今後であろう。 銀河形態進化の研究は、多少遅れ気味ではあるものの、結果については、期待通りの結果となり、円盤銀河の三次元形状が赤方偏移と共に少しづつ変わっていくということが予想よりはクリアに示すことができたと考えられる。 従って、総合的には、概ね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
ALMAのデータについては更に解析を進め、結果をまとめて行く。野辺山で得られた或いは得られる予定の新たな観測データの処理解析も進め、結果をまとめる。ALMAでの観測結果を受けて、電波や近赤外での新たな観測提案を行ったので、採択されれば、観測・データ処理・解析を行う。また、活動銀河核と星形成が同居している可能性のある銀河の近赤外観測提案も行ったので、これも採択されれば、観測・データ処理・解析を行う。また、ALMAの画像に偶然写っている銀河の検出を行い、最も暗いミリ波天体のナンバーカウントを行い、ミリ波での背景放射の約80%を個別天体に分解することに成功したが、これらの銀河の正体を探るフォロウアップの観測を進めたい。 銀河形態については、今年度得られた結果の取りまとめを行う。また、バルジ等との関係を探るべく、ハッブル宇宙望遠鏡の画像解析を進める。 その他、すばる望遠鏡FMOSでの観測結果から、化学進化を探る研究を行うと共に、ALMA等の観測用のサンプル拡張も図りたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の後半に研究打ち合わせを複数回予定していてその旅費を確保していたが、予想外に多くの会議等が入ったため、出張ができなかったのが最も大きな要因になっている。 次年度の物品については、データ処理解析用、計算機消耗品を中心に執行する。昨年度ほどは必要ないと考えている。 研究打ち合わせ、観測、学会発表等の旅費が必要である。昨年度よりは多いと予想される。 今年度は論文出版費も必要になると考えられるので、その他の経費も一定額が必要である。
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