研究課題/領域番号 |
24540231
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
伊藤 洋一 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 教授 (70332757)
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研究分担者 |
大朝 由美子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10397820)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光学赤外線天文学 / 星形成 |
研究実績の概要 |
本年度は周辺環境が及ぼす原始惑星系円盤の形状の違いについて研究した。太陽質量程度の天体は、原始星、古典的Tタウリ型星、弱輝線Tタウリ型星を経て主系列に達する。このうち古典的Tタウリ型星はHα輝線が強く、近赤外波長で赤外超過を示すものと示さないものがある。弱輝線Tタウリ型星はHα輝線が弱く、近赤外波長で赤外超過を示さない。こうした特徴は、近傍の低質量星形成領域である「おうし座分子雲」の詳しい調査で明らかになり、この30年ほどの定説となっている。ところで、恒星の過半数は大質量形成領域で形成されると言われている。それでは大質量星形成領域でも恒星は同様の進化をたどるのだろうか。そこで我々は代表的な大質量星形成領域の一つであるブライトリム分子雲に対して、可視光スリットレス分光観測を行い、Hα輝線星を探査した。ブライトリム分子雲はO型大質量星からの紫外線によって分子雲が圧縮され、誘発的に恒星が星団上に形成されていると考えられている領域である。観測の結果、100個以上のHα輝線星を検出した。これらは0.5太陽質量程度の低質量星である。これらの天体の中には、Hα輝線の等価幅が10Å以上の古典的Tタウリ型星や、Hα輝線の等価幅が10Å以下で近赤外超過を示さない弱輝線Tタウリ型星が存在する。一方で、Hα輝線の等価幅が10Å以下であるにもかかわらず、近赤外超過を示す天体が多数あることが分かった。こうした天体は低質量星形成領域には存在しないものである。O型星からの紫外線によって原始惑星系円盤がフレアアップして赤外線の超過を示すことが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までは代表的な低質量星形成領域である「おうし座分子雲」に付随する連星系に対して原始惑星系円盤の詳細な観測的研究を行ってきた。しかしながら本年度の研究によって、大質量星形成領域では原始惑星系円盤の進化が大きく異なることが示唆された。今後は大質量星形成領域に付随する前主系列星に対しても連星系の調査や原始惑星系円盤の研究を進めることが重要であることがわかった。以上のことは研究計画を立案した時には想定していなかった事柄ではあるが、今後の研究の進展に大きく寄与できるものであろう。
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今後の研究の推進方策 |
大質量星形成領域は距離が遠いので、連星系や原始惑星系円盤の直接撮像観測にはより大型の望遠鏡が必要である。低質量星形成領域に対する研究と同等の研究を実行することは現時点では不可能である。そこで1太陽質量程度の低質量星に対して高分散分光観測を行い、分光連星系を探査することなどを今後行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
他の競争的資金を獲得できたため、当科研費の使用を抑制することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
大質量星形成領域における原始惑星系円盤の形状について新たな知見が得られたので、国際研究会で発表を行い、論文を作成する予定である。
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