我々は、国立天文台岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡と可視光高分散分光器HIDESを用いて、連星の視線速度観測を長期にわたり実施してきた。本研究課題の終了とともに、この長期観測も終了することになったので、まとめの論文を執筆した。先行研究の結果と合わせて約9年間に渡る視線速度の変動を調査したところ、3つの連星系の主星から、伴星の公転運動以外に原因がある周期的な速度変動を発見した。このうち1つは未知の伴星によるものと考えられる。もう一つの天体については、最新のガイア位置天文衛星のデータを用いたり、吸収線の形状の変動(バイセクター)を調べることにより、その主星の表面に黒点などの模様があり自転によって見かけの視線速度が周期的に変動している可能性が高いことがわかった。別の一星の変動は、他のグループによって発見された太陽系外惑星によるものと考えられる。さらに、別の2星からは、周期的ではないものの顕著な視線速度変動が見つかった。一星については、惑星よりも重い伴星の公転運動によって、もしくは主星本体の脈動などによって視線速度が変動したと考えられる。視線速度の原因を追究するためには、視線速度観測のさらなる継続観測が望まれるが、国立天文台岡山天体物理観測所が共同利用観測を終了したので、これ以上の原因究明は現時点では求めないことにした。別の一星の視線速度は変動が大きく、恒星質量の伴星の公転運動によるものと結論付けられた。
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