研究課題
銀河系に付随する高温プラズマガス成分の空間構造を明らかにするため、すざく衛星のデータを用いて銀河円盤領域、銀河中心領域、およびバルジ領域の広範囲にわたって6.4、6.7、6.97 keVの3本の輝線に注目した探査を継続して行った。このデータを用いて高温プラズマ成分の銀緯方向の広がりを評価し、銀河円盤領域ではスケールハイトがおよそ0.7度程度、バルジ領域では1.5度程度であることを求め、様々な天体の空間分布と比較を行うための情報を得た。また、電離の進んでいない鉄元素からの6.4 keV輝線はある銀径340度付近で強くなっており、銀河腕の活動性との関連も考えられる。今後、これについて詳細な検討を進める予定である。銀河系中心に対称に位置する角状構造の解析を行い、左右の構造の表面輝度、スペクトルが良く似ていることを明らかにした。保持している熱エネルギー、形状、スペクトルパラメータ等の物理量を基に、この放射の起源について、それぞれ別のイベントで作られた場合と一度のイベントで作られた場合とを検討した。銀河系中心領域に位置する拡散X線放射の中に細長いフィラメント構造を持った天体が存在する。この天体の一つから、強い6.7 keV輝線を発見した。この放射には電波領域に対応天体があり、これまで非熱的放射であると考えられていたが、本解析により熱的放射であることが分かった。スペクトルは銀河系中心の拡散X線放射と類似していることをふまえ、その起源について検討した。系外銀河M101において、銀河系内拡散X線放射と同様の比較的強い鉄輝線を発見したが、輝線の特徴を銀河系内拡散X線放射と比較し、この放射の起源について検討した。超新星残骸、および銀河系内に発見した未同定天体の構造、スペクトルの解析を行い、その特徴を調査した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画に従い、銀河系に付随する拡散X線放射成分の起源解明を目指して、スペクトルに見られる3本の鉄輝線に注目した研究を継続して行った。多くの観測点のデータより、銀河系内の空間構造を調べた。また、系外銀河に同様の拡散成分が見られるかについて探査を進めた。超新星残骸、未同定天体等、銀河系内に存在する拡散X線放射について、その物理状態についての調査を進めた。以上より、様々な視点からのアプローチにより順調に研究を進められていると判断する。
これまでの研究を継続し、広範囲にわたる拡散成分の特徴を明らかにし、その起源について検討を進めていく予定である。また、銀河系内の超新星残骸、系外銀河等、関連天体の解析も合わせて行っていく。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
Publications of Astronomical Society of Japan
巻: 66 ページ: 125-1~125-6
10.1093/pasj/psu122