研究課題
天の川銀河内に存在する拡散X線放射の起源を探るため、鉄元素から放射される特性X線に注目した解析を行った。電離の進んでいない鉄からの6.4keV輝線、ヘリウム様イオンからの6.7keV輝線、水素様イオンからの6.97keV輝線の強度を求め、銀河中心、銀河バルジ、銀河円盤領域のそれぞれの領域ごとに空間分布と連続成分に対する輝線強度比にあたる等価幅を評価し、候補となりうる点源の特徴と比較した。銀河バルジ領域では、スケールハイトは白色矮星連星系やコロナ放射を持つ小質量星のものとほぼ同程度で、等価幅も起源となりうる点源の寄与の組み合わせで説明することは可能であることがわかった。したがって、点源からの放射が主要な起源である可能性が高い。銀河円盤領域では、6.4keV輝線の強度が超過している領域が存在すること、6.4keV輝線のスケールハイトは6.7keV、6.97keV輝線よりも有意に小さいこと、また、6.4keV輝線のスケールハイトは白色矮星連星系やコロナ放射をもつ小質量星のスケールハイトより小さいことがわかった。これらのことから、点源の寄与は大きいが、点源だけですべての拡散X線放射を説明することは難しいと結論した。少なくとも6.4keV輝線については新たな放射源が必要である。銀河中心領域では、3本の輝線のスケールハイトはほぼ同じであること、それらはいずれの点源のものよりも小さいこと、3本の鉄輝線とも点源のものよりも大きな等価幅を示すことから、私たちの知りうる点源で説明することは難しく、銀河中心領域の活動性等、他の起源も考える必要があると結論した。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 68 ページ: 印刷中
10.1093/pasj/psv107
10.1093/pasj/psv109
10.1093/pasj/psw057