研究課題
平成26年度は、研究計画に従い、内外の電波望遠鏡を使用して銀河系中心分子層に点在する複数のターゲットに対してミリ波サブミリ波スペクトル線観測を重点的に推し進めた。その結果、以下のような成果を得た。(1) 核周円盤の化学組成の解明(論文出版済):銀河系中心核「いて座A*」を周回する分子ガスリング構造「核周円盤」について、NRO 45m電波望遠鏡を用いた3 mm帯ラインサーベイ観測を行い、スペクトル線形状の詳細な解析から核周円盤の化学組成を明らかにした。その結果、核周円盤では周囲の巨大分子雲と異なり、3原子未満の単純な分子しか存在しない事を見出した。これは、いて座A*からのX線/紫外線によって核周円盤中の複雑な分子が壊された結果と推測され、現在は静穏な銀河系中心核が過去に活動的であった事を示す証拠の一つと考えられる。(2) 高速度コンパクト雲の詳細構造を解明(論文投稿済):星形成領域「いて座C」方向に検出された高速度コンパクト雲CO-0.40-0.22について、野辺山宇宙電波観測所(NRO)45m電波望遠鏡、ASTE 10 m望遠鏡、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計を使用した詳細なスペクトル線観測を行った。これによってCO-0.40-0.22の詳細な空間構造と運動状態が明らかにされた。そして、それらは約10万太陽質量の「見えない」点状天体による重力散乱によって説明できる事を示した。この事は、ここに中質量ブラックホールの存在を示唆するものである。(3) いて座A*の電波強度モニター:情報通信機構(NICT)鹿島-小金井VLBIシステムを使用して、銀河系中心核「いて座A*」の8 GHz/2 GHz帯における電波強度モニター観測を進めた。これは、銀河系中心核へ落下すると見られた微小ガス雲G2に起因する電波変動を捉える目的の観測であったが、現在までに有意な強度変動は検出されていない。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 4件) 備考 (2件)
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