研究課題/領域番号 |
24540237
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
久保田 あや 芝浦工業大学, システム工学部, 准教授 (00391938)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ブラックホール / X線天文学 / すざく衛星 / 降着円盤 / 質量放出 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、8月にイギリスのダーラム大学に滞在し、クリス・ドーン教授と共同で、高降着率状態にあるブラックホールの降着と質量放出を定量的に理解するために、熱的および非熱的電子のエネルギー分布を考慮した円盤コロナモデルを完成させた。このモデルは、エネルギー分布を正確に扱えるだけでなく、円盤外縁部の標準円盤、中間の円盤コロナ領域、中央の高温の降着流を総合的にNovikov-Thorneモデルで評価し、かつ中心部の放射効率を推定することができる画期的なモデルである。前年度までは、内縁流を熱的逆コンプトン散乱として簡易的に扱っていたが、最新の研究成果では内縁流における非熱的電子の役割が重要であるという示唆があり、今年度は、この効果をとりいれ、モデルの改良を進めた。 このモデルを用いて、すざく衛星で観測されたブラックホール天体GX339-4のvery high state(VHS)のX線スペクトルを評価したところ、(1)コロナは100%非熱的電子分布で説明することができること、(2)中心部では放射効率が落ちること、の2点を確認し、イギリスのMNRAS紙に論文を投稿し、掲載された。この結果は、降着流の理解と同時に、高い降着率状態で、中心で質量放出が起きていることを示唆するもので、ジェット生成機構の理解においても重要な進展である。GX339-4と並行して、別のブラックホール天体MAXI J1659-152のVHSにもモデルをあてはめ、この解析も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度から進めていたモデルとその応用の論文の投稿/受理までを終わらせることを第一の目標としており、それを達成したため。また、MAXI J1659-152については論文の執筆にいたっていないため、「(2)おおむね順調に進展」とした。
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今後の研究の推進方策 |
完成させたモデルをもちいて、MAXI J1659-152の論文を執筆する。また、銀河系外の超光度天体ULXについて、高エネルギー側まで感度のあるNuSTAR衛星のデータを解析し、同モデルを用いて評価する。ULXは恒星質量ブラックホールが非常に高い降着率状態にある天体なのか、もしくは中間質量のブラックホールなのか議論されているが、これを最新のモデルで評価することで、正体をさぐる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年04月09日~平成26年04月09日 に1年と1日産前産後休暇および育児休業を取得しており、2年目の延長願を申請し、延長したため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果を国内外での学会研究会で発表するための渡航費、および研究発表のためのノート型パソコンの購入が必要である。
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