研究課題/領域番号 |
24540238
|
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
尾関 博之 東邦大学, 理学部, 教授 (70260031)
|
研究分担者 |
小林 かおり 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (80397166)
|
キーワード | アミノ酸 / グリシン / サブミリ波分光 / ストレッカー反応 / 星間物質 |
研究概要 |
宇宙における生命を考える上で必須の物質であるアミノ酸の星間空間における合成経路の一つとしてストレッカー反応が提唱されている。これは宇宙空間に豊富に存在するアンモニアとホルムアルデヒドを原料に、メタンイミン、アミノアセトニトリルという中間物質を経たのち、最終的にグリシンを生成する反応経路である。これが星間空間においてグリシンの生成経路として有力なものかどうかを判断するためには、原料物質から最終物質に至るまでの各中間体およびその同位体各種について、電波望遠鏡を用いた探索をち密に行っていくことが必要である。 本研究はこの電波望遠鏡による探査に必要な参照周波数情報を実験室分光により明らかにすることを第一目的としている。2014年4月現在、アミノアセトニトリルおよびその重水素置換体、メタンイミンおよびその13C、15N、重水素の各置換体についてミリ波体からテラヘルツ体にわたる純回転スペクトルを始めて測定し、各分子の回転定数、遠心力ひずみ定数、および各四重極相互作用定数や各スピン回転相互作用定数といった超微細構造定数を精密に決定し、2THzまでのスペクトル線周波数を十分な精度で予想することができるようになった。これは電波望遠鏡による探査に十分な精度の参照周波数情報を提供したことに対応する。本研究成果により、ALMA(Atacama Large Millimeter/Submillimeter Array)やHerschel宇宙望遠鏡といった次世代の電波望遠鏡による本格的なアミノ酸あるいはアミノ酸前駆体探査が本格化することと思われる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要でも述べたところであるが、これまでにストレッカー反応を構成するアミノ酸前駆体物質の主要な同位体の純回転スペクトルの測定が完了し、うちアミノアセトニトリルについてはAstrophysical Journal Supplement誌にわれわれの結果が掲載された。またメタンイミンについては、Astronomy & Astrophysics誌に投稿し、現在査読の最終段階である。実験のほうではストレッカー反応以外のグリシン生成経路を検討し、その中でフィッシャートロプシュ型反応に新たに着目して、その中間体物質であるヒドロキシルアミンの分光測定を行った。この分子の分光測定は昨年度末までに完了し、現在論文の投稿準備中である。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに実施した分光実験の結果を論文化する(とくにヒドロキシルアミンの分光結果)ことが第一であるが、これに加え、研究最終年度である平成26年度は、(1)アミノメタノール、(2)ヒダントインの二種類について分光実験を行い、同定の手掛かりを得たいと考えている。これはすでに紹介したストレッカー反応およびフィッシャートロプシュ型反応以外のグリシン生成経路の可能性を検討した結果浮かび上がってきた、アミノ酸(グリシン)前駆体分子として有力な物質で、すでに昨年度から一部測定を開始しているところである。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初予定金額と実際の見積額に差異が生じたため 研究最終年度も引き続き、液体ヘリウムの購入に交付額の主要な部分を充当する予定である。液体ヘリウムは本研究で使用するサブミリ波-テラヘルツ分光計の検出器を極低温に冷却するために必須のもので、その消費量は50L/月程度である。それ以外は、測定対象分子の生成効率を向上させるためのガラス器具製作および論文投稿料として使用する予定である。
|