本年度は研究最終年度であるので、これまでの成果とりまとめ、および将来的な研究推進の布石となりうる実験を中心に行った。 まず、前年度に論文として発表したアミノアセトニトリルのスペクトル線データを、ケルン大学分子分光データベース(CDMS)および富山大学分子分光データベース(ToyaMa)に登録する作業を行った。またストレッカー反応上、アミノアセトニトリルのさらに前段階に位置する分子であるメタンイミンについても、通常種と4種類の一置換同位体種について分光測定を行い、その結果を欧州天文学会誌に投稿し受理された。これは天文学的に重要な輝線の周波数情報を30-50kHz程度の精度で提供するもので、天文観測にあたっての参照情報としては十分なものである。これについても具体的なスペクトル線データを上記二種類のデータベースおよびストラスブール大学天文学データセンターに登録する作業を行い、天文コミュニティーへの情報提供を行った。 また、本研究実施当初はストレッカー反応を中心にアミノ酸生成をとらえていたが、文献調査を進めていくことにより、星間空間で考えうるストレッカー反応以外のアミノ酸生成反応ネットワークを構築することができた。それによればアミノ酸(グリシン)の生成経路上で重要な役割を果たしている分子がいくつかあり、その中でも特に重要と考えられるいくつかの分子について分光実験を行った。アミノラジカルやメチレンラジカル、ヒドロキシルアミンなどがその例である。最後の分子については主にテラヘルツ帯のスペクトル線周波数測定をほぼ終了し、現在参照情報として精度的に十分かどうかを精査中である。この作業が終了次第、結果を発表する予定である。
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