研究課題/領域番号 |
24540242
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
本間 希樹 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 准教授 (20332166)
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キーワード | ブラックホール / 活動銀河中心核 / 電波天文学 / 超長基線電波干渉計 / サブミリ波 / イメージング |
研究概要 |
本研究課題は、サブミリ波超長基線電波干渉計を用いた高感度・高精度なイメージング手法を開発し、それを実データに応用してブラックホール近傍の構造や物理状況を描き出すことを目指している。第二年次にあたる今年度は昨年度に引き続き、国際サブミリ波VLBIアレイで得られると期待されるデータのシミュレーションを行い、イメージング性能の評価や、その改善方法の検討を行った。 イメージの高精度化へ向けた検討としては、昨年来継続して圧縮センシングによる画像再構成やベイズ推定によるモデルフィッティングなど、従来のCLEAN法と異なる画像推定方法について検討を進めた。その結果、圧縮センシング技法を用いて解析限界を上回る超解像イメージが達成できる可能性が示され、この結果をまとめて英文査読論文として投稿した。またベイズ推定によるモデリングについては、現在稼働している米国の3局の望遠鏡からなるミリ波VLBIアレイのデータにこの手法を適用し、M87の巨大ブラックホールについてその放射領域のサイズや構造に制限を付けることに成功した。 一方、高感度化へ向けた検討としては、近接局を効率的にphase-upするための基礎ツールとして、各観測局で得られた大容量のデジタルデータをフーリエ変換し遅延量を補正する基礎ルーチンを開発した。さらに、このルーチンを日本国内のVLBI観測装置であるVERAの実データに適用し、その動作を試験・確認した。 さらに、今回の研究で開発した技法を用いて将来展開する科学研究の準備として、既存のセンチ波ミリ波帯のVLBI装置による巨大ブラックホールの観測研究も勢力的に進め、Sgr A*、M87やM104といった近傍の最重要ブラックホール天体の降着円盤・ジェット構造の観測的研究や、ブレーザージェットの観測研究なども推進し、その成果を複数の論文として出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度も当初計画した研究の趣旨に従って、将来のミリ波サブミリ波VLBIによるブラックホール観測に向けたイメージング技法の基礎開発を進めている。超解像技法の可能性など、今後この分野にインパクトを与えうる成果が出ているとともに、将来のブラックホールの観測研究に向け、既存の装置を用いたブラックホール天体の観測的研究でも多数の論文を出版している。今年度もこのうち一件が天文学会の記者発表に選出されてメディアでも取り上げられるなど注目度の高い成果も出しており、今年度の段階での達成度も(2)の「おおむね順調に進展している」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はこれまで続けてきたシミュレーションによるイメージング性能の評価を継続し、さらに様々な天体構造や観測局配置の場合に対応させた計算を行い、手法の改善・最適化を図る。また、可能であれば2013年に得られた多数局によるミリ波VLBIのデータにも今回開発した技法を適用し、高精度イメージングに基づくブラックホール近傍の構造の観測的研究も行う。また、phase-up ALMAを用いたVLBI観測も試験が開始される予定であり、この活動にも参加し、実データが出てきた段階で我々独自の手法を適用できるような体制の構築を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度予定していた国際ミリ波VLBI観測が行われなかったので、当初予定していた海外での観測およびデータ解析を延期し、次年度使用にすることとした。 シミュレーションの継続のため研究補助者への謝金支出を継続する。また、国際サブミリ波VLBIの観測やデータ解析および成果発表のための研究会出席などの旅費も支出する。また、適宜成果をホームページで発信するために、その維持・管理の経費も支出する。
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