研究課題/領域番号 |
24540243
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研究機関 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
田村 隆幸 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (00370099)
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キーワード | 銀河団 / X線分光 |
研究概要 |
銀河団の衝突と合体は,宇宙で最大の力学現象の一つである。このような構造形成のなかで,暗黒物質の重力エネルギーが,ガスと銀河の運動を経由して,ガスを加熱し宇宙線を加速する。本研究の目的は,X線ラインの赤方偏移を用いて,合体にともなうガスのバルクな運動を系統的に測定することである。それによって,衝突と合体の物理を理解し,その力学を支配している暗黒物質の分布を制限する。平成24年度は,「すざく」の性能を極限まで引き出すため,検出器の較正を発展させた。検出器に備え付けの較正線源やX線で明るい銀河団ペルセウスのデータを用いて,特に,エネルギー決定精度の時間および検出器上の場所依存性を調べた。また,ガスのバルクな運動の解析手法を開発した。これらを用いて,われわれの近くにあるX線で最も明るい銀河団Perseusのデータを系統的に解析し,バルク運動の空間分布を測定した。その結果,銀河団の広い領域にわたり,300-600 km/sの精度で温度構造に制限をつけることができた。これによって,重力質量の測定の精度を高めることができる。さらに,銀河団の中心領域において,小さなスケールでのガスのバルク運動を発見した。これは,リラックスしたように見える天体では初めての発見である。これらの結果は,Tamura et al. 2014として論文に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,Perseus銀河団の「すざく」衛星のデータ解析を実施し,その結果を論文として報告した。また,成果の取りまとめに取りかかった。したがって,おおむね計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画とおり,平成26年中にデータ解析を完了し,成果を取りまとめる。また,成果を国際学会などで報告する。
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次年度の研究費の使用計画 |
投稿した論文の投稿料を,別の予算から出すことができた。また,人件費・謝金が予定より低額で実施できた。また,旅費についても,予定より安価で実施できた。これらにより,次年度使用額が発生した。 平成26年度には,海外の研究者と研究協力を行うため,中期間の海外滞在を予定している。特に,本研究のゴールであるガス運動と関連の深い,銀河団の外側での温度測定の観測を精力的に進めているアメリカのグループとの研究協力を進める。さらに,将来的に,本研究を発展される可能性の高いASTRO-Hあるいは国際X線天文台計画のサイエンス会議に出席し,本研究の成果を報告する。これらの出張に,「次年度使用額」を使用する計画である。
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