研究課題/領域番号 |
24540244
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
廣瀬 重信 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, チームリーダー (90266924)
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研究分担者 |
佐野 孝好 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 助教 (80362606)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 原始惑星系円盤 / 輻射輸送 / 磁気乱流 / 熱不安定 / ダスト |
研究概要 |
本研究の目的は、原始惑星系円盤ガスの乱流状態と温度を、輻射磁気流体力学計算によって第一原理から求めることであり、具体的な目標を(A)局所構造のパラメタ依存性と大局構造の推定、(B)局所構造解の熱安定性、(C)円盤大気における磁気乱流散逸機構、の3つに定めている。本年度は(A)と(B)に関して研究を進める予定であった。このうち(B)に関しては、まず、温度が水素電離温度近傍にある円盤ガスを取り扱うための輻射輸送コードの開発を行った。これは、局所構造解の熱安定性が問題になるのは、円盤ガスの主成分である水素の電離温度近傍において、ガスの不透明度と状態方程式が急激に変化することに起因するからである。ここでは、熱的電離平衡を仮定して、予めテーブル化した、ガスの不透明度と状態方程式を参照するようにした。コード完成後にテスト計算を行ったところ、不透明度と状態方程式が温度と密度の複雑な関数形であるために、時間陰的計算が収束しないことが度々起きるようになった。そこで、収束しない場合に限り(動的に、必要なだけ)時間刻みを細かくして、収束させる工夫を行った。これにより、広いパラメータレンジに渡ってロバストに輻射輸送の時間陰的計算を行うことの出来るコードが完成した。現在、テスト計算を終えて、パラメタサーベイのプロダクトランを開始している。一方、本年度の計画にはなかったが、(C)の枠組みで、新たにダストとガスの非熱平衡を許容する輻射輸送コードの開発を行った。円盤大気は密度が低くダスト粒子とガス粒子の衝突頻度が少ないため、ダストとガスの温度は一般に異なるが、今回開発したコードは、この差異を正しく取り入れることにより、それぞれの温度を正確に求めるものである。現在、定式化と実装を終えた段階で、来年度以降、テストを行った上で実際の問題に適用する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、本年度は、研究目的である (A)局所構造のパラメタ依存性と大局構造の推定、(B)局所構造解の熱安定性、(C)円盤大気における磁気乱流散逸機構、のうち、特に(B)と(C)を中心に研究を進めた。特に、(B)に関しては、計画していた輻射輸送コードの開発を終えただけでなく、さらに幅広いテスト計算を行った上で、熱安定性を議論するためのパラメータサーベイ(プロダクトラン)まで進んでいるという点で、当初の計画以上に進展していると言える。また、計画にはなかった(C)に関しても、磁場散逸モジュールの拡張はまだ残されているものの、メインの課題であった、ダストとガスの非平衡を許容する輻射輸送コードの開発に関しては、ほぼ計画通りに終えることが出来た。一方、(A)に関しては、今年度は、既存の数値計算コードを用いて、パラメータサーベイを行う予定であったが、ほとんど進んでいない。これは、特に課題(B)に関して、強力な競争相手が現れた(非常にコンペティティブな論文が今年度2つのグループから2本出版された)ことから、(A)に振り分ける予定であった研究時間および計算機リソースを主に(B)に割り当てたからである。このような急な(しかし避けがたい)計画の変更があったものの、3年間の計画全体としては、おおむね順調に進展していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書では、3つの研究目標である(A)局所構造のパラメタ依存性と大局構造の推定、(B)局所構造解の熱安定性、(C)円盤大気における磁気乱流散逸機構、のうち、既存の数値計算コードを用いる(A)を優先して行い、コード開発が比較的少ない(B)次に、そして最もコード開発に時間がかかるであろう(C)を最後に行う、という順番で研究を行う予定であった。しかし、現在までの達成度で述べたように、特に(B)に関して、非常に強力な競争相手が現れたほか、本年度行ったテスト計算からは、これまでの研究では予想されなかった興味深い物理現象も新たに見つかった。そこで、来年度以降は、以下のように、研究を進めるプライオリティに関して変更を行う。まず、これまでにもっとも進捗があり、かつ、もっとも早く結果を出版する必要がある(B)を優先的に進める;特に、平成25年度に関しては、リソースのほぼ全てをこの研究課題に集中する。その上で、(C)に関しては本年度開発した数値計算コードのテストおよびパイロット計算を行う。(A)に関しては、コードは既に開発済みであることから、計算機リソースに余裕がある際に、逐次パラメータサーベイを行っていくことにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初購入を予定していた物品(シミュレーション結果解析用パソコン)が発売されず、購入出来なかったため、その予算のうちの一部を使って当面の代替品を購入し、残りを翌年度に繰り越した。翌年度に当該品が発売された場合にはそれを、もし発売されなかった場合には同等の性能を有する代替品を改めて、翌年度分の助成金と併せて購入する予定である。
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