研究課題/領域番号 |
24540244
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
廣瀬 重信 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, チームリーダー (90266924)
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研究分担者 |
佐野 孝好 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 助教 (80362606)
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キーワード | 原始惑星系円盤 / 輻射輸送 / 磁気乱流 / 熱不安定 |
研究概要 |
本研究の目的は、原始惑星系円盤ガスの乱流状態と温度を、輻射磁気流体力学計算によって第一原理から求めることであり、具体的な目標として、1.局所構造のパラメタ依存性と大局構造の推定、2.局所構造解の熱安定性、3.円盤大気における磁気乱流散逸機構、の三つを掲げている。本年度は、特に 2.に特化して研究を進める予定となっており、昨年度完成させた輻射磁気流体力学計算コードを用いて、プロダクトランを行った。具体的には、角速度(中心星からの距離)を固定した上で、面密度(シミュレーションボックス内のガスの総量)をパラメタとして、どのような熱平衡解が可能かを調べた。このパラメタサーベイの結果をまとめると、(1)二つの熱的に安定な解ブランチが存在する、(2)ある面密度の範囲において系は双安定であり、反時計回りのリミットサイクルを起こす状態遷移が示唆される、(3)高温ブランチの低面密度側で、α値(ガス圧で規格化した乱流ストレス)が特異的に高い値0.1を示す、である。(1)と(2)に関しては、乱流ストレスをパラメタライズした古典モデルから予測されていたもので、乱流ストレスをその第一原理から求めた場合にも成り立つことが確かめられた。一方、(3)は、古典モデルからは予想されておらず、本研究によって得られた全く新しい結果である。実は、観測からも高温ブランチでα値が0.1になることが示唆されているが、通常の磁気乱流ではその値が説明できず、長年の謎であった。本研究から、高温ブランチの低面密度側では、ガス不透明度が高いために輻射による熱輸送が非効率となり、代わりに対流が発生すること、そして、この対流運動がコヒーレントな垂直磁場を作り、それが磁気乱流駆動の種となるため、結果としてα値が強められることが明らかになった。この成果は、The Astrophysical Journal誌に投稿され、受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究目的である 1.局所構造のパラメタ依存性と大局構造の推定、2.局所構造解の熱安定性、3.円盤大気における磁気乱流散逸機構、のうち、特に 2.に特化して研究を進めた。研究実績の概要で述べたように、当初の予定通りプロダクトランを終え、結果は原著論文として国際査読誌に投稿し、受理された。また、その内容には研究計画時には予期しなかった大きな成果(高温ブランチにおけるα値の増大メカニズムの解明)も含まれている。以上から、3年間の計画全体としては、おおむね順調に進展していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画では、研究目的である 1.局所構造のパラメタ依存性と大局構造の推定、2.局所構造解の熱安定性、3.円盤大気における磁気乱流散逸機構、のうち、既存の数値計算コードを用いる 1.を優先して行い、コード開発が比較的少ない 2.を次に、そして最もコード開発に時間がかかる 3.を最後に行う予定であった。しかし、特に 2.に関して、前述のとおり大きな進展があり、今後の発展性も高いことがわかった。また、現時点で 2.の問題を扱えるコードを有しているのは世界的に見ても我々のグループだけである。そこで、最終年度も課題 2.を中心に研究を進め、最大限の成果が得られるようにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費(主にシミュレーション結果解析用パソコン)および旅費の支出が当初の見積よりも少なく済んだため。 シミュレーションデータを保存するためのハードディスク装置購入と国際会議出席・共同研究打ち合わせのための旅費として使用する予定である。
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