研究課題
本研究の目的は、格子量子色力学(QCD)に基づく数値計算により、未発見ハドロンの性質を定量的に決定する事である。世界初となる物理点直上の極めて現実に近いシミュレーションによるチャームクォークを含むバリオンの検証及び実験への予言を目指した。研究目的達成のため、まず、チャームクォーク1つを含むバリオン質量を計算した。得られた結果を実験値と比較し、本計算の正当性を確認した。本計算手法の確立は、格子QCDによる検証及び予言の基礎付けを与えるものであり、重要である。本研究により得られたチャームクォーク1つを含むバリオン質量スペクトル値は、実験値と2シグマの範囲で一致した。これにより、計算結果の正当性が確定できた。また、計算精度は2%に達しており、本計算手法の有効性が確認できた。この結果を踏まえ、次にチャームクォークを2つ含むバリオン質量計算を実行した。チャームクォークを2つ含むバリオンは、Ξcc(3520)のみが実験的発見を報告されている。ただし、この発見を報告している実験グループは1つのみであり、他の実験グループからは否定的な結果が報告されている。Ξccの存在は未だ確定していない。本研究により、Ξccの質量値として 3603(15)(16)MeV を得た。この値は、報告されている実験値 3520 MeV とは有意に異なる。本計算により、既存の実験値 3520 MeV は誤りであり、真の値は 100 MeV 程度高い事を示した。また、Ξccに加え、チャームクォークを2つ及び3つ含む他の未発見バリオンに対する質量予言値を2%の精度で決定した。加えて、さらなる計算精度向上を目指し、新たなコードセット開発を進めた。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
PCS
巻: 29 ページ: 1701-1710
10.1016/j.procs.2014.05.155
J.Phys.Conf.Ser.
巻: 523,012046 ページ: 1-8
10.1088/1742-6596/523/1/012046