研究課題/領域番号 |
24540251
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
吉永 尚孝 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (00192427)
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研究分担者 |
東山 幸司 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (60433679)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 電気双極子モーメント / シッフモーメント / 原子核構造 / 殻模型 / 核子対殻模型 / キセノンアイソトープ |
研究実績の概要 |
中性原子の電気双極子モーメントを与えるモーメントが原子核のシッフモーメントである。本研究の目的はシッフモーメントを数値計算し、そこから中性原子の電気双極子モーメントを見積もり、素粒子の標準模型から示唆される結果と比較することにより標準模型の検証を行うことである。今年度は主に実験が積極的に行われているXe(キセノン)アイソトープの1/2+状態を扱った。原子核の波動関数を計算するにあたって、今までのシッフモーメントの研究で用いてきた核子対殻模型に加え殻模型を用いた。シッフモーメントの計算に際して、摂動論においてエネルギー分母を定数で置き換える近似であるクロージャー近似と、演算子による粒子の励起を1粒子1空孔励起で近似するタムダンコフ近似の計算手法を確立し、計算コードを作成した。また今まで考慮していなかった、原子核において粒子がすべて詰まっている状態(コア)からの粒子の励起の影響を取り入れた。その結果空いている上の軌道へ粒子が励起する影響よりも、原子核のコアから粒子が励起する影響が大きいことがわかった。また粒子がどの軌道からどの軌道へ励起しているのかを解析したところ、励起の軌道依存性が大きいことが分かった。また計算で得られたシッフモーメントを用い、中性原子の電気双極子モーメントを標準模型の枠組みで見積もったところ、キセノン129において3.0×10の(-36乗) ecmという値が得られた。よってもしこの値より大きな電気双極子モーメントが実験的に観測されると、それはすなわち標準模型を超える物理の明確な証拠となる。次に中性原子の電気双極子モーメントをGlobal analysisから見積もられた強い相互作用の結合定数の上限値を用いて見積もると、キセノン129において1.7×10の(-27乗) ecmという値が得られた。この値は現在得られているキセノン129原子の電気双極子モーメントの実験の上限値4.1×10の(-27乗) ecmと同程度の値である。
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