研究課題/領域番号 |
24540252
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
近藤 慶一 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60183042)
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研究分担者 |
柴田 章博 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, 講師 (30290852)
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キーワード | クォーク閉じ込め / 汎関数くりこみ群 / Savvidy真空 / Nielsen-Olesen不安定性 / Nielsen-Olesen不安定性, / 双対超伝導 / 双対マイスナー効果 / 非閉じ込め相転移 |
研究概要 |
1)クォーク閉じ込めを示す真空の代表例として知られる,空間的に一様なカラー磁場の凝縮を持つSavvidy真空がタキオンモードの存在のために不安定であるとNielsenとOlesenによって指摘されて久しい。これは1-ループの結論であるが,我々は,汎関数繰り込み群を用いれば,Savvidy真空のNielsen-Olesen不安定性は消滅することを示した。これは,複素数に値を持つ有効平均作用に対するWetterich型汎関数繰り込み群方程式に対しては,虚数部分を持たない安定解が,新規な固定点を表現する解として,任意の赤外切断パラメータの値に対して実現するという発見から従う。これは,十分小さい赤外切断に対しても,安定性を維持するために固定点に留まることを可能にする物理的機構が存在を示唆するが,その例として,質量次元2のBRST不変な真空凝縮に起因するグルーオンの動力学的質量生成(グルーボールと同一視可能)を議論した。 2)我々は,SU(3)ヤンミルズ理論における閉じ込めのメカニズムは,非可換マグネティックモノポールによる非可換双対超伝導であることを提唱し,線形クォークポテンシャルにおける弦定数には非可換モノポールの寄与が支配的であること,クォーク・反クォーク対の間に伸びる色電場フラックスを測定して,非可換双対マイスナー効果の存在を確認し,非可換双対超伝導はI型であること等を示した。これは,トイモデルであるSU(2)ヤンミルズ理論では,閉じ込めにおいて支配的なのは可換モノポールであるという従来の可換射影による結果とは異なり,双対超伝導はI型とII 型の境界とも異なる重要な結果である。我々は,これらの方法論を有限温度の場合に適用し,ポリャコフループの期待値とポリャコフループ対相関関数を測定し,カラー場のフラックスを測定し,有限温度の閉じ込め・非閉じ込め相転移を理解できることを検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
汎関数くりこみ群を用いた解析的方法に関しては,低エネルギー有効理論の系統的改良を試みる過程で生じた,真空の安定性を分析する問題の解決に予想以上に時間がかかったために,当初予定していた有限温度への拡張が未消化となった。しかし,Savvidy真空のNielsen-Olesen不安定性は30年以上に渡る未解決問題であるので,それに関して明確な結論を引き出せたことは,その遅れを補って余りあると考える。これを踏まえて次年度に遅れを取り戻したい。一方,数値シュミレーションを用いる方法に関しては,有限温度での非可換双対超伝導描像に基づいて,閉じ込め・非閉じ込め相転移を理解する研究はおおむね順調に進展しているが,もうひとつの観点で予定していた伝播関数の測定がやや遅れており来年度に見送った。
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今後の研究の推進方策 |
クォークとグルーオンの同時閉じ込めを詳しく議論する一つの方法は,Yang-Mills理論に対する汎関数くりこみ群方程式を近似的にでも解くことで,フローパラメータがゼロの赤外極限まで追跡できるような近似解を具体的に見つけることが必要であるが,これは数値的には可能になっているが,解析的には十分には理解されておらず,閉じ込めの帰結を議論することも困難にしている。これを打開するために他の解析的方法を併用して多角的に解析を進めることが必要である。例えば,既に我々が得ているSU(N)Yang-Mills理論の定式化を用いて,ラージNの場合を検討することは試みるに値する一つの方向である。 数値シュミレーションを用いる方法に関しては,双対マイスナー効果のメカニズムを調べるために,SU(3) Yang-Mills理論の2つの等価な定式化をゲージ不変なフラックスの測定に適用することで,カラーフラックスにおいて何が支配的な成分かを特定する。それに基づいて,有限温度での非可換双対超伝導描像に従って,閉じ込め・非閉じ込め相転移を理解する研究をさらに推し進め,確定した結果を得られるように努力する。特に,有限温度の場合を徹底的に調べる。有限密度の場合は予備的研究に止める。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は様々な理由により研究が若干遅れ気味になったので,次年度に当初の計画より多くを割り当てることが賢明と判断して,旅費を意識的に抑えたために未使用が生じた。 次年度は最終年にあたり,成果発表の機会が増えるためにそのための費用として使用したい。
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