研究課題/領域番号 |
24540252
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
近藤 慶一 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60183042)
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研究分担者 |
柴田 章博 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 計算科学センター, 研究機関講師 (30290852)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | クォーク閉じ込め / 磁気単極子 / 双対超伝導 / カラー閉じ込め / 双対マイスナー効果 / 質量ギャップ / 格子ゲージ理論 |
研究実績の概要 |
SU(2)ヤンミルズ理論において,基本表現のウイルソンループから計算されたクォークの静的ポテンシャルにおいて,取り出された線形ポテンシャルの弦定数に対して,アーベリアン部分(制限場)および磁気単極子の寄与が支配的であることをゲージ非依存な形で示した。クォークと反クォークをつなぐ方向にのみ,色場のフラックスが形成され,そこでは,色磁場の成分は無く,色電場の成分のみが現れること,および,そのフラックスの周りに磁気モノポールから成る円状のカレントが誘導されることを観察し,双対マイスナー効果を確立した。また,双対マイスナー効果においても制限場が支配的寄与を与えることを確認した。双対超伝導の型も,これらの結果を双対ギンツブルグ=ランダウ模型とフィットして決定した。従来の主張と異なり,我々の結果は,双対超伝導がI型であることを示している。これは,SU(3)ヤンミルズ理論と同様の結果である。この事実は,QCD真空が,従来考えられていたようなII型の超伝導体の電磁双対であるとは言えないことを示しており,今後,真空の安定性の問題と関連したより深い理解が必要である。このようにして,クォーク閉じ込めの双対超伝導描像がゲージ非依存な形で支持されることを示した。これらの結果は,Cho-Duan-Ge-Faddeev-Niemi分解から示唆される変数変換に基づいて,我々が発展させた新しい場の変数を用いた格子ヤンミルズ理論の再定式化とウイルソンループ演算子に対するDiakonov-Petrov型の非可換ストークスの定理とを併用することで得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ひとつの理由は,これまでの10年にわたる我々の閉じ込めに関する研究成果をレビュー論文にまとめてPhysics Report誌に投稿するというプロジェクトが同時進行したために,その作業に多くの時間を割かざるを得なかったためである。幸いにも,それは,2015年中に出版されることが決まった。 もうひとつの理由は,ヤンミルズ理論に対する汎関数くりこみ群方程式の解が数値的にしか求まっておらず,その解のコントロールが数値的にも容易ではなく,有限温度の閉じ込め-非閉じ込め相転移の本質が理論的には明快には理解できていなかったことが,やみくもに研究を進めることを躊躇させたことにある。しかし,次の欄に示したように,この問題は,いまや解消し,今後は大きな進展が見込める。
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今後の研究の推進方策 |
有限温度で,非常に高温の非閉じ込め相から低温の閉じ込め相への相転移がなぜ起こるのかは,これまで,汎関数くりこみ群による数値計算,格子ゲージ理論による数値シミュレーションなど数値的にしか示されておらず十分な理解に達していなかった。しかし,ごく最近,ゲージ場の分解によって生じる残りの場のゲージ不変な質量生成が起こる(この事実自体は既に知られている)こと,その値が温度によって大きくは変化しないことを考慮すると,閉じ込め-非閉じ込め相転移の存在が明快に理論的に理解でき,転移温度をより正確に予言,計算することも可能になることが予想される。今後は,この予想の理論的基礎を明確化し,それを数値的にも裏付けることによって,有限温度の閉じ込め-非閉じ込め相転移の理解,有限温度での双対マイスナー効果の存在を示し,相転移温度以上の非閉じ込め相で双対マイスナー効果がどのように消滅するかを調べ,有限温度での閉じ込めの機構を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に得られた研究成果を平成27年3月に京都大学で開催される国際会議で発表する予定であったが,別の国際会議を組織委員となって名古屋大学において全く同じ日程で開催することが平成26年11月になって明らかになり,研究成果発表をすることができなくなったため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
このため、平成26年度に得られた研究成果の会議発表は次年度に行うこととし,未使用額はその経費に充てることとしたい。
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