研究課題/領域番号 |
24540253
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菊川 芳夫 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (20252421)
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キーワード | 格子ゲージ理論 / 符号問題 / モンテカルロ法 / Lefschetz thimble / Complex Langevin 法 / 有限密度 |
研究概要 |
複素位相の有効作用を持つ系の数値的なシミュレーション法として,系の経路積分を複素数積分経路に拡張し,特にLefschetz thimble 上に積分経路を取ることで作用を実数化し,確率的な手法に持ち込むアプローチが提案されている[1],[2]。このアプローチは原理的にも興味深く,汎用性という利点もある。しかし,複素積分経路に伴う積分測度からの複素位相の効果がどの程度あるかは,未だ詳しく調べられていない。 H25年度は,Lefschetz thimble上のHybrid Monte Carlo法のアルゴリズムを有限密度下のcomplex λφ4乗模型(BoseGas)の非対称相に適用した。その結果,非対称相でもComplex Langevin法による結果と矛盾のない結果が得られており,L=4の格子サイズにおいてはアルゴリズムの有効性が確認された。この研究成果は,論文として雑誌に掲載された。また,国際会議 SIGN2014等において招待講演として発表を行った。 [1] E.Witten, arXiv:1001.2933 [hep-th]. [2] Aurora Science collaboration, Phys.Rev. D86 (2012) 074506.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Lefschetz thimble上で定義される格子模型に適用可能なHMC法を開発し,格子サイズは小さいながらも,積分測度に現れる複素位相の効果が十分小さくなることが確認できたことは成果であった。他の格子模型への応用の可能性が高まったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度までの研究に引き続き,Lefschetz Thimble上でのHybrid Monte Carlo法の有効性の検証と改良を進める。特に,より大きなサイズの格子上での有効性を検証できる様に,Lefschetz Thimble上のHybrid Monte Carlo法の改良とコードの開発を行う。GPUクラスタ用の実装によって,complex λφ4乗も系のL=8-12サイズの格子でのシミュレーションを行い,積分測度からの複素位相の体積依存性を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度に見込まれる経費としては,国際会議参加,成果発表のための旅費,滞在費,物品および計算機使用料を計上していたが,旅費,滞在費の支出が少なめに済んだこと,また,物品の性能を考慮して購入を延期したことが理由である。 次年度に見込まれる経費には,国際会議参加,成果発表のための旅費,滞在費,物品費,計算機使用料を想定している。物品費は,GPUアップグレード,コンパイラ購入など計算環境の維持に用いる予定である。
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