研究課題/領域番号 |
24540254
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大川 祐司 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (10466823)
|
キーワード | 弦の場の理論 |
研究概要 |
超弦の場の理論を定式化する際に、世界面上の超共形ゴーストセクターをどのように取り扱うかが大きな問題である。通常 small Hilbert space と呼ばれる状態空間を用いると、超リーマン面の超モジュライ空間との対応を通して超弦の場の理論のゲージ対称性の本質的な理解につながると期待されるが、これまでのアプローチでは局所的な picture-changing 演算子を用いていて、その特異性から超弦の場の理論をうまく定式化することができなかった。一方、開弦の超弦の場の理論においては、Berkovits が large Hilbert space と呼ばれる状態空間を用いてボソンのセクターについては特異性のない定式化を実現することに成功していたが、なぜこの方法でうまく行くのかについての理解は進んでいなかった。 以前に東京大学駒場素粒子論研究室で研究指導受託をしていた名古屋大学の大学院生である飯森氏、理化学研究所の基礎科学特別研究員である野海氏、鳥居氏との共同研究に基づき、我々は Berkovits 型の超弦の開弦の場の理論のゲージ対称性を部分的にゲージ固定することにより、small Hilbert space に基づく特異性のない超弦の開弦の場の理論が構成できることを明らかにした。特に4点散乱振幅を詳細に調べ、Berkovits 型の定式化での4点相互作用がこれまでの small Hilbert space に基づく定式化での問題点を解消するメカニズムを明らかにした。これは small Hilbert space に基づく超弦の場の理論の定式化は困難であるというこれまでの思い込みを打破する重要な結果であり、この結果により超弦の場の理論のフェルミオンのセクターや量子化についてのこれまでの困難の本質的な解決につながる道筋が切り開かれることが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
飯森氏、野海氏、鳥居氏との共同研究による研究成果を論文としてまとめる際に、想定していたよりもはるかに長い時間を費やした。主たる原因は、私が大学における研究以外の業務で多忙を極めていたためであるが、論文を執筆する過程で研究成果の重要性のより深い認識が得られ、その知見を論文に反映させるために時間を費やしたことも一因である。今回の我々の研究成果を契機に、別のグループも重要な研究を展開しており、より重要な進展につながる可能性を考えて今後の研究の方向性を調整していることも表面的な研究目的の達成度の遅れにつながっている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究成果は開弦の超弦の場の理論に関するものであったが、そのアプローチは閉弦の超弦の場の理論にも適用できると考えられる。ヘテロ型の閉弦の超弦の場の理論に関しては、過去の Berkovits, Zwiebach との共同研究により large Hilbert space を用いた定式化に成功しているので、この理論のゲージ対称性を部分的にゲージ固定することにより small Hilbert space に基づくヘテロ型の閉弦の超弦の場の理論の構成を試みる。特にゲージ不変性から要請された4点相互作用について、small Hilbert space に基づく定式化での役割を明らかにすることが重要である。また、超リーマン面の超モジュライ空間との対応につながるところまで研究が進展してきているので、この方面での Witten の最近の研究に詳しい研究者との共同研究を展開することを考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度にイタリアで開催されることになっていた弦の場の理論の国際研究会に参加する予定であったが、その研究会の開催が平成26年度に延期されたため。また、このことに関連して海外から研究者を招く計画を変更したため。 延期されて平成26年度にイタリアで開催されることになった弦の場の理論の国際研究会に参加する。また、海外の研究者を平成25年度に招く予定であったが、計画を変更して平成26年度に招く予定である。
|