研究実績の概要 |
平成25年度の飯森氏、野海氏、鳥居氏との共同研究を契機に超弦の開弦の場の理論の定式化の研究が大きく進展し、Erler, Konopka, Sachs により世界面上の超共形ゴーストセクターの small Hilbert space と呼ばれる状態空間に基づく A∞ 構造を持つ超弦の開弦の場の理論のボゾンを記述する Nevue-Schwarz セクターが構成された。一方、超共形ゴーストセクターの large Hilbert space と呼ばれる状態空間を用いた Berkovits による超弦の開弦の場の理論の定式化は、より大きなゲージ対称性を用いた picture-changing operator に由来する特異性のない定式化であり、今後、フェルミオンを記述する Ramond セクターの定式化の進展に向けて、Erler, Konopka, Sachs の定式化と Berkovits の定式化の関係を理解することが鍵になると考えられる。
今年度、Erler と研究室の大学院生である竹嵜氏との共同研究により、Erler, Konopka, Sachs によって構成された A∞ 構造を持つ作用を Berkovits による定式化で本質的な役割を果たす関係式が現れる形に書き換えることに成功した。これにより Berkovits による定式化での大きなゲージ対称性を部分的に固定して得られる理論と Erler, Konopka, Sachs による定式化の等価性が示され、両者の弦の場の関係も明らかになり、small Hilbert space に基づく Erler, Konopka, Sachs による定式化を large Hilbert space に基づく定式化に埋め込むことも可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の Erler, 竹嵜氏との共同研究に関しては、Erler が東京大学大学院総合文化研究科に滞在して集中的に議論を行ったことが決定的に重要であった。慢性的に研究のための時間が不足している状況で研究を推進するためには、このように共同研究者を招く、もしくは私が共同研究者を訪問することにより、研究のための時間を確保することが効果的であると考えられる。
研究自体は順調に進展しているが、Erler, Konopka, Sachs は Ramond セクターに研究を進めており、今後のさらなる進展が期待される。国際研究会で情報収集し、必要があれば研究の方向性を修正して行く。
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