研究課題/領域番号 |
24540257
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
樽家 篤史 京都大学, 基礎物理学研究所, 准教授 (40334239)
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キーワード | 宇宙大規模構造 / 赤方偏移ゆがみ / バリオン音響振動 / 銀河パワースペクトル / 修正重力理論 / 摂動論 |
研究概要 |
銀河サーベイを用いた宇宙論研究において、銀河パワースペクトルは最も基本的な観測であり、本年度はそれに付随する赤方偏移ゆがみに着目し、理論・観測双方から次のような研究を行った。(1) 重力理論が一般相対論とは異なる場合に、赤方偏移ゆがみへの影響を定量化する理論モデルを構築し、赤方偏移ゆがみの精密観測から重力理論を検証・制限する方法論について考察を行った。(2) スローンデジタルスカイサーベイ(SDSS)のアーカイブデータを用いて、銀河パワースペクトルを測り、摂動論にもとづく高速理論テンプレートから赤方偏移ゆがみを測定した。それより、密度ゆらぎの構造成長率を求め、宇宙論的スケールでの重力理論は一般相対論と矛盾しないことを突き止めた。また、バリオン音響振動も同時に測定し、宇宙膨張が宇宙項入りの標準宇宙モデルで記述できることを確認した。上記の研究の他、摂動論的計算手法を用いて銀河/ハローバイスペクトルの評価を行い、原始非ガウス性がある場合に現れる強いスケール依存性の定量的な見積もりを行った他、全角運動量法と呼ばれるテクニックを用いて、スカラー・ベクトル・テンソルすべての摂動に対する重力レンズ効果を考察、角度パワースペクトルの解析的公式を統一的に導出することに成功した。これら2つの成果は、日本のすばる望遠鏡を用いた宇宙論観測プロジェクト SuMIReへの応用が考えられ、今後、観測データから原始非ガウス性や宇宙ひもなどを制限する際、役立つ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に前倒しで研究を進めることができたこともあり、交付申請書で挙げた課題のうち本年度は、高速理論テンプレートの観測的応用と、修正重力理論に対して理論テンプレートの拡張を進めることができた。後者に関しては赤方偏移ゆがみを取り入れた理論テンプレートが完成し、観測的な応用も進めつつある。ただ、従来の摂動計算にもとづく理論テンプレートであり、実用面でやや制約が生じるという課題が残っているが、おおむね計画通りの研究を達成できている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、修正重力理論における宇宙大規模構造の理論計算の改良を進め、赤方偏移ゆがみを考慮したパワースペクトルおよび2点相関関数の高精度理論予言を行う他、観測的な応用を進める。これまでに開発した方法論にもとづき、最新の観測データであるSDSS DR10/11 の銀河の非等方パワースペクトルから、赤方編ゆがみからゆらぎの構造成長を測定するとともに、バリオン音響振動から宇宙膨張の同時測定を行う。また、ニュートリノのフリーストリーミング効果を取り入れた高速理論計算についても考察を進め、観測的な応用可能性を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年末に最新の銀河観測データ(SDSS DR10/11)がリリースされたため、急遽、新たなデータを用いた赤方偏移ゆがみの測定を行う計画をたてた。その打ち合わせのため、研究者招へいのための旅費と謝金分を確保したのだが、年度内の双方の都合が合わず、次年度の計画に持ち越すことになった。 最新の観測データであるSDSS DR10/11 の銀河の非等方パワースペクトルを用いて、開発した方法論をもとに、赤方編ゆがみとバリオン音響振動を測定するため、国内研究者(広島大学、東京大学)を招へいし、研究打ち合わせを行う。招へいにかかる旅費、謝金を支払う予定である。また、これまでの研究成果を発表するため、国内外の学会・研究会へ出張する。国外の主な出張先はフランス、韓国の研究機関などである。また、数値解析の効率化を上げるためのソフトウェアや記録媒体(ハードディスク、USBメモリ)の購入も予定している。
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