研究課題/領域番号 |
24540260
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
今村 洋介 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (80323492)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超対称性 / ゲージ理論 / 分配関数 / 局所化 |
研究概要 |
近年の超対称ゲージ理論における大きな進展は、厳密な分配関数が計算可能となったことに負うところが大きい。特に、さまざまな背景時空上に定義されたゲージ理論に関して分配関数を調べることで、ゲージ理論の異なる側面を見ることができるため、いろいろな多様体の上で超対称ゲージ理論を定義し、その分配関数を計算することが重要である。そこで24年度は3次元および5次元のゲージ理論について、これまで分配関数の公式が知られていなかった多様体について、その上のゲージ理論の分配関数を与える公式を導出した。 3次元のゲージ理論に関しては、3次元球面のオービフォールドを背景時空とするゲージ理論について詳しく調べた。オービフォールド上のゲージ理論にはホロノミーと呼ばれる量子数によって区別される複数のセクターが存在するが、これまでそれらのセクターの寄与を足し上げる際の相対的な符号についてはどのように決めればよいのか知られていなかった。私は異なるゲージ理論の間の双対性を手掛かりにすることでそれらの位相を決定できることを幾つかのゲージ理論について示した。 5次元のゲージ理論については、これまで5次元の球面上の分配関数が知られていたが、球面を変形したときに分配関数がどのように変化するかは知られていなかった。私は3つのパラメータで表わされる球面の特殊な変形について、分配関数のインスタントンの寄与を含まない部分を計算し、三重正弦関数の簡単な表式で与えられることを発見した。このような、分配関数の変形に対する依存性を決めることができると、そのパラメータに対して極限操作を行うことで、それまでに関連が知られていなかったさまざまな状況を統一的に扱うことができる可能性があり、重要な進展であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は厳密な分配関数の計算を通してゲージ理論のダイナミクス、特にさまざまな理論の間の双対性などを調べることである。24年度はオービフォールド上の理論の双対性の研究において、ホロノミーセクターの足し上げにおける位相因子の重要性を指摘し、その決定方法をいくつかの理論について具体的に与えるといった 進展があった。また、5次元球面上の分配関数の計算に関して、当初予定していなかった成果を上げることができた。この結果は次年度以降、さらに進展させられるのではないかと期待している。 ただ、当初予定していた非自明なサイクルに巻きついたブレーンのゲージ理論における役割については成果を上げることができなかった。このように、当初予定していなかった成果を上げることができた反面、できなかったこともあるため、 区分は(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は24年度に得られた研究成果に基づき、さまざまな背景のゲージ理論の間の関係や弦理論との対応などについて調べる予定である。 まず、24年度に得られたオービフォールド上の分配関数について、因子化の方法を用いることで、超共形指数や3次元球面上の分配関数などとの統一的な理解を目指したい。因子化というのはある物理量がより基本的な量の積として表されることを意味するが、超共形指数と3次元球面上の分配関数については、全く同じ因子を用いて表すことができることが知られている。オービフォールドの場合にこのような解析を行うことで昨年度は双対性を用いて間接的に得られた位相因子をより直接的に得ることができ、その存在理由についても何らかの知見を得られると考えている。 また、24年度に得られた5次元の分配関数についても、変形パラメータに関するいくつかの極限を考えるなどの方法により、異なる次元、特に3次元や4次元の場の理論とのつながりを明らかにしたい。 さらに近年、さまざまな次元の超対称ゲージ理論を統一的に理解する鍵はM理論におけるM5ブレーンであろうと考えられており、3次元の指数や分配関数の性質は理論が定義されているM5ブレーンの幾何学的性質と密接に関係していることが明らかになりつつある。24年に得られた3次元ゲージ理論の分配関数についての結果を生かしつつ、M5ブレーンの物理との関連いついても探っていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度に予定していた小規模研究会を開催しなかったために、その分の予算を繰り越すこととなった、これは、昨年度は類似の研究会が既にいくつも予定されていたため、他の時期に行ったほうが有効であろうと判断したためである。従って、今年度、適当な時期に小規模研究会を行うこととし、繰越金はその予算に当てたいと考えている。
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