弦理論やM理論は素粒子の統一理論として有望視されているだけではなく、現実世界のさまざまな現象についての情報を得るための数理科学的なモデルとしても重要であり、それらの性質の理解は現在の素粒子論の重要な課題となっている。特にM理論に含まれる広がりをもった物体であるM2ブレーンやM5ブレーンの性質を調べることは、いまだ知られていない弦理論の構成的定義を得るうえでも不可欠であると考えられる。そのような背景のもと、本研究計画の目的は、M2ブレーンやM5ブレーンの性質を超対称ゲージ理論を用いて調べることにあった。具体的には、近年大きく発展した局所化と呼ばれる手法を用いて、それらのブレーンと密接な関係にある超対称な場の理論の分配関数をさまざまな曲がった時空上で厳密に計算し、これまでに知られている双対性などの性質を確認、拡張することでより深いM理論の理解を得ようとするものであった。1年目、2年目は3次元及び5次元の超対称ゲージ理論に関していくつかの分配関数の公式を新たに得ることができ、それまでに知られていた双対性などをさらに補強する結果を得ることができた。最終年度は、M5ブレーンと密接に関係する5次元の超対称ゲージ理論の性質の研究を行い、いくつかの仮定の下で、超対称性をその上で定義できる最も一般的な背景時空を構成し、論文として発表した。この解はさまざまな興味深い時空をその特殊な場合として含むため、それらの上でのゲージ理論の性質を調べる上で大変便利である。その後、この結果に基づき、これまでに解析されたことの無い背景時空の上で超対称ゲージ理論の分配関数を計算し、M理論における励起モードに対する情報を得ようと試みたが、残念ながら計算途中の技術的問題のためこの計算の結果を期間内に得ることができなかったことは大変残念であるが、着実に進展してはいるため、今後の研究につなげ、有意義に役立てたい。
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