研究課題/領域番号 |
24540265
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
菅野 浩明 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (90211870)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インスタントン分配関数 / AGT 関係式 / Whittaker ベクトル |
研究概要 |
4次元超対称ゲージ理論の M 理論的構成法から予想される対応関係である AGT 関係式について研究を行った.AGT 関係式とは4次元ゲージ理論側でインスタントンの数え上げから定義される母関数(Nekrasov の分配関数)と共形場理論における共形ブロックとの関係であるが、この関係式は分配関数を共形場理論側で定義される特別な状態(Whittaker ベクトル)の内積(ノルム)として表わすことができることを予言する. まず,4次元超対称ゲージ理論に基本表現に従う物質場(hyper multiplet)を入れた場合, Whittaker ベクトルの定義関係式がどのような変更を受けるか SU(3) 理論を例としてを調べた.通常 Whittaker ベクトルは対応する共形場理論のカイラル代数の低次の生成元の同時固有状態として特徴づけられるが,物質場を入れた場合は,それらの生成元の一部が固有値に関する1階微分作用素として Whittaker ベクトルへ作用することを見出した. ここで得られた Whittaker ベクトルの定義関係式は共形場理論でプライマリー場に対応するリーマン面上の確定特異点が2つ合流して不確定特異点が生じた結果として理解される.この見方に立って3つ以上の確定特異点の合流から得られる状態について調べ,それらが4次元ゲージ理論側では Argyres-Douglus 型と呼ばれる特殊な超共形場理論と対応することを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,面演算子 (surface operator) を入れたゲージ理論の分配関数を研究対象とする予定であったが,面演算子の有無に関わらず,物質場 (hyper multiplet) を入れた場合の Whittaker ベクトルの定義関係式が明らかにされていないことが分かり,それを解明することに今年度を費やすことになった.しかし,この結果,微分作用素を含む Whittaker ベクトルの定義関係式という思わぬ可能性を発見することができた.この可能性をさらに追求することにより, Argyres-Douglus 型と呼ばれる特殊な超共形場理論に関する新たな共同研究が生まれた.当初の計画を進める上で,新たな問題の発見とその解決を見たことは十分意義があった.また,連携研究者の森山は ABJM 模型のインスタントン効果に関する研究で大きな成果を挙げている.計画書に挙げた SISSA (Trieste) の研究グループ,モスクワの ITEP の研究グループとの交流は,それぞれの地に1週間程度滞在し,研究成果の発表と研究交流を行った.
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今後の研究の推進方策 |
1階微分作用素を含む Whittaker ベクトルの定義関係式には,初期条件に相当する不定性がある.4次元超対称ゲージ理論の M 理論的構成の観点から,その由来を明らかにするとともに,当初の目的であった面演算子を入れたゲージ理論の分配関数の研究を進める.以上は M5 ブレイン上の6次元理論に関する研究であるが,これと相補的関係にある M2 ブレイン上の理論である ABJM 行列模型については連携研究者の森山による大きな進展が見られたので,共同研究の可能性を探る.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画として,最も大きなものはモスクワの ITEP の研究者(A. Marshakov 氏)の招聘である.これは 2014 年 2 月から 3 月にかけて2週間ほどを予定している.その他は,研究代表者および連携研究者が国内の研究会などに参加するための旅費に充てる.
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