研究概要 |
(1) 核子を含む模型の有限密度への拡張:[M.Harada et al., PRD86 (2012) 021901(R)]では、核子に対する平均場を導入する手法(ホログラフィック平均場理論)を提案しました。そして、核物質中でのスカラー中間子の効果を明らかにするため、スカラー中間子を含む模型に対してホログラフィック平均場理論を用い、低密度領域では化学ポテンシャルが密度の増加に伴って減少することを示しました。(論文執筆中) (2)HLS模型でのソリトン解:文献[Y.L.Ma et al., PRD86, 074025:1-9 (2012)]及び[Y.L.Ma et al., PRD87, 034023:1-17(2013)]ではまず、文献[M. Harada et al., PRD74, 076004 (2006)]の方法を拡張し、ホログラフィック模型からHLS模型のパラメータを決定する手法を提案しました。そして、そのHLS模型におけるソリトン解を求め、核子の質量を再現するためにはρ中間子、そしてω中間子が特に重要な働きをすることを示しました。また、文献[M.Harada and Y.L.Ma, PRD87, 056007(2013)]では、得られたソリトン解をD中間子を含む模型に用い、チャームクォークを含むバリオンの質量スペクトルを解析しました。 (3) HLS模型を用いたスキルム・クリスタル :上記(2)で構築したソリトン解からスキルム・クリスタルを構成しました。そして、標準原子核密度近傍でハーフスキルミオン相と呼ばれる新しい物質相が存在することを確認しました。また、低密度領域では核子の有効質量は密度の増加に伴って減少すること、及びハーフスキルミオン相では密度が増加しても変化しないことを示しました。(論文執筆中)
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今後の研究の推進方策 |
(1) スカラー中間子をディラトンとして含むホログラフィック模型の定式化 : 文献[C.Csaki, H.Ooguri, Y.Oz, J.Terning, JHEP9901, 017 (99)]等で行われたように、カイラル・シングレット・スカラー場は、ホログラフィック模型では、スケール変換を担うディラトン場として導入することができます。文献[C. Csaki, M. L. Graesser and G. D. Kribs, Phys. Rev. D 63 (2001) 065002]の方法を応用することによって、クォーク・反クォーク型ハドロンとディラトン場が結合する新しいホログラフィック模型の構築を進めます。平成25年度は、構築した模型を用いて、メソン質量の現象論的解析を行う予定です。 (2) スキルムクリスタル模型を用いた有限密度核物質の性質:24年度(3)で構築したスキルムクリスタル模型を用い、核物質中でのρ中間子の質量、核子の軸性結合定数gA などの物理量の変化を調べる予定です。 (3) ホログラフィック平均場を用いた非対称核物質の研究:陽子数密度と中性子数密度の差が大きい場合はアイソスピン化学ポテンシャルが大きくなります。この場合には、π中間子凝縮・K中間子凝縮が起こることが期待されています。24年度(1)で構築したホログラフィック平均場理論を用い、アイソスピン化学ポテンシャルのアイソスピン密度(陽子数密度と中性指数密度の差)依存性を調べる予定です。 (4) 磁場を入れた場合の核物質の相構造:核物質を強磁場中においた場合、相構造が変化することが期待されています。これをホログラフィック平均場理論などを用いて調べる準備を進めることを計画しています。
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