研究課題/領域番号 |
24540267
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松原 隆彦 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (00282715)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 宇宙論 / 初期非ガウス性 / パワースペクトル / 統合摂動論 |
研究概要 |
当該年度は統合摂動論の応用を複数行った。特に初期ゆらぎの非ガウス性の影響をバイアスされた天体の大スケールにおけるパワースペクトルについて求めた。先行研究で行われていた見積りは近似的なものであったが、統合摂動論によりそれらの近似を取り外して、これまででもっとも正確な見積りを与えることができた。これまでの研究では、ピーク背景分離法を用いた研究が主流であったが、本研究の一般的な結果からそれらこれまでの近似的な公式が導かれることを示した。この結果は論文にまとめて国際学術誌で発表した。 この研究を行うためにハローのバイアスを記述するモデルをこれまでに知られているものから拡張する必要があった。この結果はこの問題に限らず一般的な有用性を持つと思われる。この発見を元にして、統合摂動論の一般的で有用な公式を導く計算を行った。この基礎的な研究は25年度以降の研究に用いる。 初期の非ガウス性については、上記の研究をさらに拡張して、高次非ガウス性の効果を取り込んで、バイアスされたパワースペクトルへの影響を系統的に調べた。この研究では、効果の弱い重力非線形成長を無視して、初期非ガウス性の大きさによって展開する新しい観点を導入した。特に4点の非ガウス性の効果を調べ、3点の非ガウス性の効果と分離する方法を求めた。バイアスされた天体の分布と質量分布との相互相関により定義されるストカスティシティー・パラメータ、あるいは相互相関係数と呼ばれる統計量を用いて、3点の初期非ガウス性と4点の初期非ガウス性を区別する方法について議論した。これまでの先行研究に比べて、統合摂動論を用いると非常に見通しがよく整合的な展開法を与えることが、具体的な例を通して明らかになった。 この他にも関連する研究として、宇宙マイクロ波背景放射や初期ベクトル場のモデルについての研究も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
統合摂動論の応用は、予想以上の広がりを持つことが明らかになった。本年度はインフレーション理論を制限し得る有力な方法として宇宙の初期非ガウス性についての観測量を、統合摂動論に基づいて導出した。研究の進展に伴い、高次の非ガウス性に関する研究、ハローバイアスのモデルの拡張の可能性、など、統合摂動論によると非常に見通しのよい研究が可能であることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに行った統合摂動論の基本的な応用を、さらに広い統計量に広げる。これまでは2点の統計量であるパワースペクトル、相関関数を調べてきたが、3点の統計量であるバイスペクトルや、高次のスペクトルに対するバイアスや赤方偏移空間効果を調べる。 また、統合摂動論の重要な要素である、バイアスの取扱い方法について、より現実的な天体形成を扱えるように精密化する可能性を探る。 また、数値シミュレーションとの比較も行う。これについても、2点の統計量である相関関数、パワースペクトルの比較をすすめ、さらに3点の統計量についても比較をする。バイアスの効果を調べるためにはハローのカタログを数値シミュレーションから作る必要があるが、かなり大きな規模のシミュレーションが必要である。このための解析コード開発を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果をより広く知らしめるため、イタリアにおける専門的な国際会議に出席する。この会議は、とくに天体のバイアスをいかにモデル化するかに特化した専門的なものであり、そこでの発表、議論、情報収集は非常に有用である。 国内の学会や研究会に適宜出席し、情報収集や研究発表を行う。 データ解析を手元で行うためのコンピュータ環境を整備するため、ノート型もしくはデスクトップ型のパソコンを新しく購入する。 さらに、情報収集のために専門的な図書を購入する。
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